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大ごとになった「胃腸薬にドーピング混入」

2019/11/05
田邉昇(弁護医師、中村・平井・田邉法律事務所)

 マスコミ各社の報道によると、レスリング男子グレコローマン77キロ級の東京オリンピック代表選手候補である阪部創選手(26歳、自衛隊所属)が10月8日付けで、製薬会社の沢井製薬と陽進堂に対して慰謝料など約6000万円の損害賠償を求めて東京地方裁判所に提訴したことを発表したようだ。

 医師から処方された胃腸薬に本来含まれていない禁止物質(アセタゾラミド)が混入しており、2018年6月の大会の後のドーピング検査で陽性反応が出たことで、阪部選手は同年8月、日本アンチ・ドーピング機構(JADA)から暫定的に半年間の資格停止処分を受けた。その後の調査で過失なしと判断され、2019年2月22日に処分が取り消されている。資格停止期間中、試合に出場できなかったり、全体練習にも参加できず、精神的被害を受けたという。

 この胃腸薬というのがエカベトNa顆粒66.7%「サワイ」である。製造販売元の沢井製薬に原末を提供した陽進堂の供給品にアセタゾラミドが混入していたようだ。両社が連名で厚生労働省に提出した報告書(日本アンチ・ドーピング機構の注意喚起文書)によれば、原薬の製造元であるNAKODA社(インド)の原薬製造過程でアセタゾラミドが混入したことで、最終製品までキャリーオーバーしたとされている。当然だが、ガストローム(エカベトナトリウムの先発品の商品名)には普通、アセタゾラミドなど含有されてはいない。添加物として利尿作用のあるマンニトールは含まれているが、この成分は静注した場合にのみドーピングに引っかかるようである。

著者プロフィール

たなべ のぼる氏〇 1984年に名古屋大卒。都立駒込病院に勤務し、名古屋大学大学院で血液内科学を専攻する傍ら、救急医療、臨床腫瘍学などにも従事。旧厚生省などでの勤務を経て2001年に弁護士登録。診療を行う傍ら、医師の視点で弁護士として、非常勤裁判官として、医療訴訟を中心に多くの事件を担当。中村・平井・田邉法律事務所に所属。

連載の紹介

弁護医師・田邉昇の『医と法の視点』
話題の医療・医学に関連したニュースを、臨床医(総合内科専門医・血液専門医)でもあり、旧厚生省の勤務経験を持つ田邉昇氏が、法律家の立場で易しく解説します。

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