日経メディカルのロゴ画像

「花粉分解マスク」裁判で争われそうなこと

2019/07/31
田邉昇(弁護医師、中村・平井・田邉法律事務所)

 消費者庁が2019年7月4日、光触媒で花粉症を防ぐことをうたったマスクを販売する4社に対し、景品表示法(景表法)に基づく差し止め再発防止策の徹底を求める措置命令を出した(こちら)。

 1社(アイリスオーヤマ)は既に当該マスクの販売を終了しており、2社(DR.C医薬、玉川衛材)は「適切な表示に努める」とする対応方針を法人ウェブサイトに掲載している。一方、大正製薬は、「消費者庁の措置命令は合理的ではない」として、法的な対応・措置を検討中である(同社のリリースはこちら)。

 「花粉が光触媒で分解され」うんぬんの科学的な正しさは、これから行政訴訟などで争われるはずなので、何も言わない。ただ、個人的な印象としては、「花粉が光によって水と二酸化炭素に分解する」と聞いたときには「そんな革新的な技術があったのか!」と驚いた。ただ、こう言っているのは大正製薬を除く3社で、大正製薬の製品ではアレルゲンの不活性化のことを分解と表現している。また、光触媒の作用によって不活性化・分解に至るのは、一般的に数時間~数十時間後のことであるようだ(消費者庁の試験では白色蛍光灯を48時間照射している。なお、各社製品の個別データは調査できていない)。もし、マスクに付着した花粉が不活性化・分解されるとしても、マスクの網に花粉が引っかかるだけで花粉症は緩和されるはずだ。「何でこんなにすごい技術を使わなければならないのか」という疑問も湧いてくる。

著者プロフィール

たなべ のぼる氏〇 1984年に名古屋大卒。都立駒込病院に勤務し、名古屋大学大学院で血液内科学を専攻する傍ら、救急医療、臨床腫瘍学などにも従事。旧厚生省などでの勤務を経て2001年に弁護士登録。診療を行う傍ら、医師の視点で弁護士として、非常勤裁判官として、医療訴訟を中心に多くの事件を担当。中村・平井・田邉法律事務所に所属。

連載の紹介

弁護医師・田邉昇の『医と法の視点』
話題の医療・医学に関連したニュースを、臨床医(総合内科専門医・血液専門医)でもあり、旧厚生省の勤務経験を持つ田邉昇氏が、法律家の立場で易しく解説します。

この記事を読んでいる人におすすめ