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医師の過労死裁判と「働き方改革」

2019/06/13
田邉昇(弁護医師、中村・平井・田邉法律事務所)

 医師の過労死をめぐる判決が、最近、地裁レベルで幾つか出されている。

 1つは、2014年12月に長崎みなとメディカルセンターの心臓血管内科に勤務していた当時33歳の男性医師が過労死したとされる件である。長崎地方裁判所は2019年5月27日、雇用者である地方独立行政法人長崎市立病院機構に対して約1億6700万円の賠償を命じた。男性は直前1カ月の残業が159時間、死亡直前ではないものの数カ月前に84日連続で勤務。男性が病院に申請していた時間外労働時間よりも実際の院内滞在時間が大きく超過していたにもかかわらず、こうした勤務状況を正確に把握せず、勤務体制も見直さなかったとして、病院側の安全配慮義務違反を認めている。既に男性は公務災害認定(民間の労働災害に相当)を受けていた。

 一方、広島地方裁判所は2019年5月29日、男性産婦人科医がうつ病を発症して2009年に自殺した事案で、労災認定の却下取消しを認めた(関連記事)。男性は発病前の半年間、月80時間以上の時間外労働に従事し、2週間以上の連続勤務も複数回あったと認定。常勤の産婦人科医が2人しかおらず、その中で部下と対立したことも心理的負担になったと指摘した。

 労災認定の場面では、産婦人科医の激務の実態が明らかになっている。東京都の産婦人科研修医が2017年に労働基準監督署から労災認定を受けた事案では、死亡1カ月前の時間外労働が173時間にも及んでいたという(関連記事[外部サイト])。

著者プロフィール

たなべ のぼる氏〇 1984年に名古屋大卒。都立駒込病院に勤務し、名古屋大学大学院で血液内科学を専攻する傍ら、救急医療、臨床腫瘍学などにも従事。旧厚生省などでの勤務を経て2001年に弁護士登録。診療を行う傍ら、医師の視点で弁護士として、非常勤裁判官として、医療訴訟を中心に多くの事件を担当。中村・平井・田邉法律事務所に所属。

連載の紹介

弁護医師・田邉昇の『医と法の視点』
話題の医療・医学に関連したニュースを、臨床医(総合内科専門医・血液専門医)でもあり、旧厚生省の勤務経験を持つ田邉昇氏が、法律家の立場で易しく解説します。

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