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東京医大の裏口入学贈収賄事件で憂うべきこと

2018/07/13
田邉昇(弁護医師、中村・平井・田邉法律事務所)

 文部科学省の現職局長が、東京医科大学に研究補助金選考の便宜を図る見返りに、入学試験の点数に下駄を履かせて自分の息子を不正合格させた受託収賄事件で逮捕され、話題になっている。その後、安倍政権を批判していた前川喜平・元文部科学事務次官との関係など、あれこれ政治的な話題としてもやかましいことになっているし、東京医大の現体制の批判なども取り沙汰されている。

 医学部の裏口入学と言えば、私が受験生だった1970年代は、新設私立医大は多額の寄付金がないと入学できないということが通り相場で、寄付金額が安い大学は難易度が高くなっていた。むしろ教育内容や研究業績などはあまり難易度とは相関しなかった(ちなみに国立大学の年間学費は数万円だった)。過去には国公立大学でも、医学部の入試問題が印刷を請け負っていた刑務所から持ち出されて受験生の親に高額で売り渡され、買った者の子弟が入学に至ったという珍事が起こったことがある。

 そもそも私立大学において、特定の受験生に対し、他の受験生とは異なる金銭の支払いを条件に、入学を許可することは、特に犯罪にはならない。ただし、文部科学省はあれこれ行政指導するであろうし、「寄付金は入学後でないと受け取ってはいけない」という通知を出していたと記憶している。

 では、本件で何がいけなかったのか。贈収賄罪ということであるが、どのような犯罪構成要素になるのであろうか。まず基本的なことではあるが贈収賄罪は、公務員や公務員になろうとする者にだけ適用されるものである。公立病院の先生方も同じ公務員であるから、注意したいものである。

著者プロフィール

たなべ のぼる氏〇 1984年に名古屋大卒。都立駒込病院に勤務し、名古屋大学大学院で血液内科学を専攻する傍ら、救急医療、臨床腫瘍学などにも従事。旧厚生省などでの勤務を経て2001年に弁護士登録。診療を行う傍ら、医師の視点で弁護士として、非常勤裁判官として、医療訴訟を中心に多くの事件を担当。中村・平井・田邉法律事務所に所属。

連載の紹介

弁護医師・田邉昇の『医と法の視点』
話題の医療・医学に関連したニュースを、臨床医(総合内科専門医・血液専門医)でもあり、旧厚生省の勤務経験を持つ田邉昇氏が、法律家の立場で易しく解説します。

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