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ACCORD試験で示されたHbA1cの個人差の重要性

2021/01/25
田原保宏(明舞中央病院糖尿病内科)

 HbA1cは血糖コントロールを判定する最も重要な指標ですが、合併疾患や個人差の影響により血糖値が同じであっても、患者により大きなバラツキを示すことが明らかになりました。HbA1cに大きな個人差があることはDCCT1)のデータでも示されていましたが、DCCTではHbA1cと平均血糖が高い相関を有することが評価され、HbA1cの個人差については全く注目されませんでした。DCCT、UKPDSなどの大規模研究により、強化療法でHbA1cを引き下げると糖尿病の合併症を抑制できることが証明され1、2)、HbA1cが血糖コントロールのgold standardとなりました。これらの結果、基本的な血糖コントロール目標をHbA1c<7%とするという世界的コンセンサスが得られました。

 しかし、更に研究が進むと、この基準では心血管疾患の発症を十分に抑制できないことが問題となってきました。このため、HbA1cをもっと引き下げれば心血管疾患を十分に抑制できるのではないかと考えられ、ACCORD試験3)、ADVANCE試験4)、VADT試験5)などの大規模試験が行われました。

 ところが、更に強力な血糖管理を行っても心血管疾患が減少しないだけでなく、ACCORD試験で全死亡が有意に増加するという結果になってしまいました。ACCORD試験の結果は世界に強い衝撃を与えました。ACCORD試験でこのような結果を来した原因は重症低血糖の多発にあると考えられ、できる限り低血糖を起こさないことが新たなコンセンサスになりました。ACCORD試験の結果については多数の二次解析が行われましたが、何が強化療法群の全死亡を増加させたかよく分かりませんでした。ところが、最近になり、ACCORD試験の問題はHbA1cの個人差を無視したことにあることが判明しました6)。今回は、これらの問題について述べたいと思います。

著者プロフィール

1967年東京大学工学部卒業、72年同大学院修了、72年~77年富士通研究所に勤務後、77年大阪大学医学部に編入。81年同卒業後、大阪大学老年科を経て1990年から明舞中央病院、2009年同院長。HbA1c、グリコアルブミンを中心に数学的手法を用いた糖尿病の臨床研究を展開。

連載の紹介

田原保宏の「数理糖尿病学」
HbA1cに関する多くの問題について数学的研究を進めたことから田原氏が創成したのが「数理糖尿病学」です。糖尿病に関するさまざまな課題を数理糖尿病学で解くとどうなるか、詳しく解説していきます。

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