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数理糖尿病学とは何か?

2020/01/16
田原保宏(明舞中央病院糖尿病内科)

 数理糖尿病学というのは私が創成した、数学的な手法を用いて糖尿病を研究する分野のことです。このような研究を始めたのは、1990年頃からHbA1cに関する臨床研究を開始したことにあります。当時、HbA1cの臨床的有用性はほぼ確立されていましたが、その生理学的振舞はきちんと解明されていませんでした。我々は、HbA1cの生成代謝機構をモデル化し、このモデルを数学的に解析するという方法でHbA1cと過去の血糖の関係などを明らかにしました。この成功をきっかけにHbA1cに関する多くの問題についての数学的研究を進め、次第に数理糖尿病学という分野が私の中で形成されていきました。

 これらの研究で得られた結果のうち、臨床で有用なものは日本糖尿病学会で発表してきましたが、最も大きな成果は、糖尿病に関するいろいろな問題が、数理糖尿病学という新しい考え方で研究できるという事実にあります。ただ、研究内容にはハイレベルの数学的知識を要するものが多く、臨床系の学会で十分な理解を得るのは必ずしも容易でありませんでした。

 このたび、日経メディカルから「数理糖尿病についてのシリーズを執筆しませんか?」という提案を受け、日経メディカル Onlineに数理糖尿病学に関する解説の連載を始めることになりました。数理糖尿病学の内容を、複雑な数学的表現を取り除き、できる限り基礎的な知識のみで理解できるように工夫して、お伝えしたいと思います。また、本研究で得られた臨床で役立つ結果だけでなく、研究そのものの面白さをお伝えできればと考えています。

著者プロフィール

1967年東京大学工学部卒業、72年同大学院修了、72年~77年富士通研究所に勤務後、77年大阪大学医学部に編入。81年同卒業後、大阪大学老年科を経て1990年から明舞中央病院、2009年同院長。HbA1c、グリコアルブミンを中心に数学的手法を用いた糖尿病の臨床研究を展開。

連載の紹介

田原保宏の「数理糖尿病学」
HbA1cに関する多くの問題について数学的研究を進めたことから田原氏が創成したのが「数理糖尿病学」です。糖尿病に関するさまざまな課題を数理糖尿病学で解くとどうなるか、詳しく解説していきます。

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