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医薬分業率6割超時代の「面分業率」は?

2010/09/02

 国が医薬分業の推進策に力を入れ始めてから随分たちますが、日本薬剤師会の調査によると、2009年度に、全国の平均分業率がようやく60%を超えたようです(関連記事:2010.8.3 「分業率が60%を突破」)。

 厚生労働白書には、医薬分業の利点として、「かかりつけ薬局」「薬剤の効果・安全性の向上」などのキーワードが挙げられています。厚生労働省では、医療費抑制の狙いもあり、調剤薬局や薬局薬剤師の役割の拡大を促しながら質の高い医薬分業の広がりを後押ししてきました。そのかいあって分業率は60%を突破したわけですが、必ずしも、ことが思い通りに運んでいるとは言い切れません。例えば私の知り合いは、複数の薬局から「お薬手帳」をもらっています。かかりつけ薬局(?)が複数あるわけで、これでは、薬剤管理の一元化による安全性の向上や、重複投薬の防止などはあまり期待できません。

 医薬分業が本来の機能を果たす上では、「面分業」の促進が不可欠です。面分業とは、薬局が、不特定多数の医療機関からの処方せんを受け付ける運営形態のことをいいます。これであれば、患者は1カ所のかかりつけ薬局で、通院するすべての医療機関からの処方せんに対応してもらえます。ただし、面分業の薬局では多種多様な薬剤を在庫しておかねばならず、経営面でリスクを負います。

 一方、限られた少数の医療機関からの処方せんを受け付けている薬局の分業形態は、「点分業」や「門前分業」と呼ばれます。患者にとっては、通院する医療機関によって、薬局を使い分けなければならないデメリットが生じますが、薬局側からすれば、在庫リスクを抑えられるというメリットがあります。そのため、全国の調剤薬局のほとんどは「点分業」や「門前分業」だといわれています。

1年間で76医療機関から処方せんを受け付けていた薬局も 
 そこで今回は、分業率が60%を突破する中、面分業の広がりがどうなっているかを、いつもの通り健保組合のレセプトを使って調べてみました。具体的には、面分業の広がりを確かめるためのプロセスとして、以下のポイントについて分析しています。

(1)「点」「面」の分業形態別に、薬局数の分布はどうなっているのか
(2)「点」「面」の分業形態別に、処方せん件数はどうなっているのか
(2)「点」「面」の分業形態別に、実患者数はどうなっているのか

 薬局は、処方元の医療機関数に応じて、8グループに分けました(図1以降を参照)。以下の分析では、便宜上、処方元の医療機関数が年間21施設以上の薬局を「面分業」形態としています。ちなみに、処方元が5施設以下のグループは、特定の診療所とのマンツーマン分業が中心だと想像されます。また、「6-10施設」「11-20施設」の中には、メディカルモールなどに併設されている薬局や、大病院の門前薬局などが多く含まれていそうです。大病院の門前薬局などは、大規模で機能が充実しており、大病院の周囲に連携先のクリニックが多く存在するケースも珍しくないことなどから、結果的に面分業に近い運営形態になっている例もみられます。なお、処方元の医療機関数が最も多かった薬局では、76施設からの処方せんを受け付けていました。

 今回の調査の観察対象期間は、過去からの推移を見るために、05~09年の5年間としました。また、あまりにもレセプト件数の少ない薬局は対象から外し、各年に100件以上の調剤レセプトが確認された薬局だけを抽出しています。対象になった薬局数、患者数、処方数は以下の表の通りです。

著者プロフィール

木村真也(株式会社日本医療データセンター社長)●きむらしんや氏。1981年京都産業大学卒。大手外資系製薬会社マーケティング部長、CROバイスプレジデントなどを経て、2002年に日本医療データセンターを設立。

連載の紹介

レセプトを読み解く
日本医療データセンター(JMDC)では、複数の大手健康保険組合からのレセプトや健診データを基に、様々な分析を行ってます。1000万件を超える膨大なデータから、同社社長の木村氏が、医療の「今」を探ります。

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