日常診療で期待する治療効果を得るためには、処方した薬剤を患者が決められたようにしっかりと服用することが治療の前提となります。この服薬アドヒアランスを良好に維持することは、治療の基盤になります。
内服薬の場合、薬剤を取り出した後に残る空のヒートシートを確認することで、患者自身も介護者も内服状況が確認できます。特に高齢患者で、飲み忘れや服用間違いが著しい場合、服用回数や錠数の間違いを避けるために、朝、昼、夕、寝る前など同じ時間帯に内服する薬を一緒に合わせ一袋内にセットする、いわゆる「一包化」がしばしば行われています。
一方、吸入薬は内服薬と比較し、一般的に服薬アドヒアランスの低下が著しく、これを吸入指導で補う努力が繰り返されてきました。2020年の調剤報酬改定で「薬剤服用歴管理指導料」に「吸入薬指導加算」30点が新設され、薬剤師による吸入指導に保険点数が加算されたことは記憶に新しいことですが、吸入指導の重要性が再確認された大きな一歩といえます。これまで、数回吸入指導を繰り返しても、正しい吸入手技操作が体得できない場合は、その患者さんの身体的なハンディキャップなどを再評価し、操作性がよりマッチした、より簡便な別のデバイスへの変更もしばしば試みてきました。
しかし、的確な操作を正しく体得しても、吸入回数や吸入時間を守れない、吸入を忘れてしまう、アドヒアランスの悪い患者さんが少なくありません。服薬アドヒアランスと吸入手技の誤操作は別次元の問題であるからです(図1)。特に、内服薬を「一包化」している患者さんの場合、内服回数は守れても、吸入薬がそのまま放置される場合もあり、介護者も吸入したのか把握できていない場合がよくあります。当然のことながら、吸入薬は内服薬のように「一包化」はできませんから……。
えっ!? そうでしょうか?
