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吸入指導の思わぬ伏兵(8)
二コチンを含まない電子たばこは安全か?

2019/04/24

 電子たばこの中で、リキッド加熱タイプのものはリキッドを加熱して発生した蒸気の香りを楽しむものが主流です。日本では薬事法でニコチンを含むものは製造販売禁止となっているからです。吸入指導する際に、喫煙歴を確認すると、「もうニコチン入りのたばこを吸っていない。香りを楽しむだけなら安全だろ」「COPDにならないので、これぐらいは吸わせてくれ」と言われる患者さんが徐々に増えてきています。

 ところで、ニコチンさえ入っていなければ、加熱リキッド蒸気を吸っても本当に問題ないのか? 人体への悪影響は無いのか? ふと疑問を感じました。この答えのヒントとなる、新しい報告を見つけましたので、紹介します。

 Scottらは、ニコチンを含む電子たばこリキッド(e-cigarette liquid: ECL)と、ニコチンを含まない電子たばこリキッド(nicotine-free e-cigarette liquid: nfECL)、さらにニコチンを含む電子たばこリキッドを加熱して出てきた蒸気を水に通したECL凝縮液(e-cigarette vapour condensate:ECVC)と、ニコチンを含まない電子たばこのECVC(nfECVC)の4種類の液体を準備し、非喫煙健常者から採取した肺胞マクロファージを24時間、これら4種の液体に曝露させ、その生存率を検討しました1)。肺胞マクロファージは肺内で細菌などを除去する働きがあり、その機能が低下すると肺炎などの感染リスクが高まります。COPDの増悪や死亡原因の一番は肺炎などの呼吸器感染症ですから、肺胞マクロファージは重要な白血球です。

 図1に示すように、ニコチンを含むECLでの肺胞マクロファージの生存率は培養液中濃度が2.5%(volume/volume)とした場合、78.8%(図1左上)、ニコチンを含まないECL(nfECL)では84.6%(図1右上)でした。ニコチンが入ると、その生存率は落ち、ニコチンが肺胞マクロファージに害があること分かります。なお、ニコチンを含むECLのニコチン濃度は35mg/mLとなっています。2.5%ということは培養液1mL当たり0.9mgのニコチンが入っていることになります。紙巻きたばこでは箱にニコチン0.9mgなどと書かれています。これが1本分の煙当たりに含まれる量といいますから、この実験で用いられているニコチン量は過剰とは言えない、適正な実験だろうと思います。

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著者プロフィール

大林浩幸(東濃中央クリニック〔岐阜県瑞浪市〕院長)●おおばやし ひろゆき氏。日本呼吸器学会「COPD診断と治療のためのガイドライン(第4版)、(第5版)」査読委員、日本アレルギー学会「喘息予防・管理ガイドライン(JGL2009、JGL2012、JGL2015、JGL2018)」作成委員。藤田医科大学医学部客員教授、島根大臨床教授。吸入療法アカデミー代表理事。

連載の紹介

プライマリケア医のための喘息・COPD入門
「吸入薬を処方したのに症状が改善しない」という患者さんの多くは、正しい診断に基づいた適切な治療を施すと、とても良くなります。喘息・慢性閉塞性肺疾患(COPD)の診療において、みなさんが陥りやすいピットホールと、的確な診療のポイントをわかりやすく解説します。
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『喘息・COPD吸入療法の患者指導に必携!
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 このたび、この連載「プライマリケア医のための喘息・COPD入門」を書籍化いたしました。
 2013年6月から開始したこの連載は、気管支喘息やCOPD診療の主役となった吸入デバイスによる吸入療法を指導する上で必要な情報、患者が陥りやすい操作ミスを、具体例とともに紹介しています。
 書籍では、現在利用可能な11の吸入デバイスごとに、合計300枚を超える写真をふんだんに使いながら、患者が陥りやすいピットホール(誤操作)を大林浩幸氏が書き下ろしています。さらに本書では、吸入デバイスの内部メカニズムも解説。デバイスのメカニズムを知り、操作ミスが発生する母地を把握しておくことで、患者の操作ミスを発見しやすくなり、ミスを起こしやすい操作を重点的に指導することも可能になります。
 ぜひ、日々の患者指導にご活用ください。(大林浩幸著、日経BP社、4500円+税)

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