難治性中耳炎を合併する「抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎」(AAV)では治療が遅れると、難聴や頭蓋内合併症を起こす。初期症状には中耳炎様の症状のみ、ANCA陰性の場合もしばしば見られる。ANCA陰性でもANCA関連血管炎性中耳炎(OMAAV)を完全には除外せず注意深く観察するようにしたい。
前回に続いて、今回も症例を見ていこう。繰り返しになるが、ANCA関連血管炎性中耳炎(OMAAV)は、治療が遅れると、中耳以外に新たな病変が出現したり、不可逆的な感音難聴に進展したり、肥厚性硬膜炎からのクモ膜下出血を来したりする。ただ、早期のOMAAVでは症状が中耳に限局し、血管炎などの特徴的な病理所見がなく、ANCA陰性例もあるため診断が困難なこともあり得る。
次に示すのは滲出性中耳炎を発症し、PR3-ANCA陽性で鼻咽喉頭病変、皮膚病変、肺病変、多発性単神経炎に進展したケースである。