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外来での感染症診療は適切なアセスメントから

2019/01/16
岡 秀昭(埼玉医科大学総合医療センター)

 初めまして。埼玉医科大学の岡秀昭と申します。

 本連載では感染症について、感染臓器の診断法と、外来でできる適切な治療法を紹介していきます。初回ですので、まずは外来における感染症診療の原則について考えてみたいと思います。

 さて皆さんは、「一般的な診療所の外来で診る感染症の患者さんには、広域の抗菌薬を処方しておけばなんとかなる」「本当に大変な症例は専門家が入院させて診てなんとかしてくれる」――そのように考えておられないでしょうか? ですが、患者さんを診るのが、外来であろうと病院集中治療室であろうと、あるいは、患者さんが免疫不全者であろうとなかろうと、感染症診療の原則は同じなのです。

 まずは私が経験したこんな症例をご紹介します。まずは39℃の発熱を主訴に搬送されてきた40歳代男性のケースです。前医では広域抗菌薬のクラビット(一般名レボフロキサシン)を処方されていたものの、解熱せず状態が悪化したため紹介されました。よく話を聞くと、アフリカ方面への渡航歴があることが分かったため熱帯熱マラリアを疑い、重症化したものの抗マラリア薬で九死に一生を得ることができました。

 このような事例もあります。38℃の発熱が続いた20歳代女性で、最初はフロモックス(セフカペンピボキシル)が処方されていたのですが、効果なくジスロマック(アジスロマイシン)に変更。それでも解熱せず、CRP値が15mg/Lに上昇したためクラビットを処方した結果、やや解熱したものの5日間飲みきると再燃。ついには右手の麻痺まで出てきたということで私どもの救急外来を受診したところ、感染性心内膜炎による脳塞栓症が引き起こした脳膿瘍でした。その後の治療により命は助かりましたが残念ながら後遺症を残してしまいました。抗菌薬の安易な処方によって診断が遅れ、取り返しがつかなくなったケースです。

 「マラリアや感染性心内膜炎なんてまれだろう」と考えられるかもしれません。ですが、勝ちに不思議の勝ちあり、不思議の負けなし。かぜだと診断してとりあえず抗菌薬を処方して治ってしまった“不思議の勝ち”ではなく、このような失敗例にこそ学ぶべきなのです。

 外来感染症診療の大原則は、発熱や炎症反応上昇のみを理由に抗菌薬を投与しないことです。同じく、解熱しない、あるいは炎症反応が下がらないというだけで抗菌薬を追加・変更してはいけません。入院やICUでも同様です。抗菌薬を適切に処方するためには、適切なアセスメントを行うことが診療の場所に関係なく重要なのです。

著者プロフィール

岡秀昭(埼玉医科大学総合医療センター総合診療内科・感染症科教授)●おかひであき氏。2000年日本大学卒。日本大学第一内科で研修後、横浜市立大学、神戸大学、東京高輪病院などを経て、2020年7月より現職。

連載の紹介

岡秀昭の「一般外来で感染症をどう診る?」
「感染症専門医が勧める検査なんかいちいちやってられない」――感染症治療に対して、そんな思いを持っておられませんか? 岡秀昭氏をはじめとした埼玉医大総合医療センター感染症科のメンバーが、プライマリ・ケア医が最低限押さえておくべき感染症診療のポイントを解説します。

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