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【連載第18回 スキル編(6)】
記録する癖を付けよ

2007/07/02

記憶は速やかに減衰する
 その昔、癌研病院(現:癌研有明病院)の手術更衣室には、20カ条の「べからず集」が張られていたという。当時の、そして、それから後も半世紀にわたって同病院の外科のチーフを務めた不世出の大外科医梶谷環先生の若き医学徒への垂訓である。

 その一つに、「手術記録は翌日まで延ばすべからず」というのがある。私がこの“梶谷語録“を知ったのは外科医となって20年も経たころだったが、正に至言と感じ入ったものだ。

 手術を終えて直ちに書き始めたとしても、100%正確な記述にはなり得ない。2~3時間も間を置けば1割程度は事実と異なる記述になる。まして翌日に延ばせば細部の所見はいい加減あやふやになり、およそ正確な手術記録とはなり得ない。だから最低限その日のうちに書く癖を付けなければならない。延ばせば延ばすほど記憶は薄れ、書くこと自体が億劫になる。

カルテの記載も義務付けよ
 手術記録ばかりではない、外来でも回診でも、患者の訴えや所見を簡潔にカルテに書き留める習慣を付けなければならない。回診での記録は、主治医制である場合、さぼろうと思えば幾らでもさぼれる。

 以前、東京のさる民間病院で、外科の入院患者のカルテがほとんど白紙状態であるのに驚かされたことがある。私が着任するまで外科医は1人で、1日中バタバタと忙しく動き回り、回診もささっと済ませていたようだ。保健所からの監査通知が入ると慌てて何日分ものそれを書き入れるのだが、もとよりでたらめな記載である。私が入って交代で回診をするようになり、所見をしっかりと書くよう指示したが、慣れというのは恐ろしいもので、「変わりなし」の記載に終始し、創の具合、排液量などの記載がまるで欠けていた。

著者プロフィール

大鐘 稔彦(南あわじ市国民健康保険阿那賀診療所院長)●おおがね としひこ氏。1968年京大卒。民間病院の院長、外科部長などを経て、99年より南あわじ市国民健康保険阿那賀診療所(兵庫県南あわじ市)院長。

連載の紹介

研修医必見!臨床のスキルとマナー
患者に選ばれる医師になるには?医療訴訟に巻き込まれることなく的確な医療を実践するには? ベテラン医が、自身が体験したエピソードをベースに、診療のコツや臨床医としてのマナーを説きます。

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