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【連載第17回 スキル編(5)】
文献を読む癖を付けよ

2007/06/15

 臨床医の日常は忙しい。いや、忙しくなければならない。食事時以外ほとんどゆっくり腰を落ち着けていられないくらいフル稼動して当然で、若い裡は頭よりも体で覚えることが多い。手術にしても検査にしても、技術的なトレーニングは反復作業により使う道具を手や指になじませることによって上達していく。

 しかし、知識の方は、やはり机の前に座して成書や文献を繙(ひもと)き、その内容を記憶に留めなければ得られない。勤務時間内に一度でも文献を繙く時間を見出せれば幸いだが、できなければ、1日のノルマから開放された後、家路に就く前にその時間を作ることである。

メモとファイリングの癖を付けよ
 文献に目を通して読み流すだけではもったいない。電子版であればそれを保存したり、ノートを常備して、これはと思う箇所を書き留めておいたり、コピーを撮ってファイリングしておく癖を付けるとよい。 

 殊に統計学的な数字は早々に記憶から逸脱しやすいから、その文献を見失ったら復元できないということがないように、こうした努力を怠らないことである。単なる症例報告にしても、学会発表や論文をまとめる上で大いに役立つ。

外国文献にも目を通せ
 論文の「まとめ」では必ず外国の症例にも言及しなければならない。日本人の書いた論文の「まとめ」からちゃっかり拝借という手がなきにしもあらずだが、外国語の読解力を高める意味でも幾つかの文献には目を通しておくべきだろう。その意味では、「外国文献抄読会」を定期的に開いている病院に勤めるとよい。

 私は卒後約10年間に母校の3つの関連病院を回ったが、どこでも外国文献抄読会が行われていた。最初の病院では脳外科の部長が主宰しており、数名の若い医者が参加していた。次の病院では、私と内科の同期生と薬剤師の3人で「Pharmacology」(薬理学)」なる部厚いテキストを読み合った。3つ目の病院では、外科の医局が音頭を取り、整形外科の院長や若い婦人科医、内科医も参加し、夜の8時から10時、時には深夜まで活発に議論し合った。懐しい思い出である。抄読会で読み合った文献は無論ファイルして取っておいたが、数年後、その一つが思いがけず役立つことになった。

著者プロフィール

大鐘 稔彦(南あわじ市国民健康保険阿那賀診療所院長)●おおがね としひこ氏。1968年京大卒。民間病院の院長、外科部長などを経て、99年より南あわじ市国民健康保険阿那賀診療所(兵庫県南あわじ市)院長。

連載の紹介

研修医必見!臨床のスキルとマナー
患者に選ばれる医師になるには?医療訴訟に巻き込まれることなく的確な医療を実践するには? ベテラン医が、自身が体験したエピソードをベースに、診療のコツや臨床医としてのマナーを説きます。

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