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【連載第14回 スキル編(2)】
視触打聴診をマスターせよ―その1

2007/05/15

 患者が腹痛を訴えて外来を訪れると、最近の若い医者は患者の腹も触らずにエコーのオーダーを出したりする。咳を訴えて来た患者には、患者が胸をはだけようとしているにもかかわらず、聴診器をあてがうことをせず、さっさと胸部X線撮影や採血のオーダーをする。「脈が乱れてます」と言う患者に、腕を取って脈を診ることもせず心電図の指示を出す医者はさらに多い。

 こうした短絡的な行動に走る理由は何であろう。考えられるものを挙げてみよう。
(1)視触打聴診に自信がない。
(2)どうせ検査をすることになるだろうから二度手間である。
(3)視触打聴診で診断は付くかも知れないが、それだけでは収益につながらない。

視触打聴診こそ臨床医の基礎
 まず(1)の理由を考えてみる。医学部のカリキュラムに視触打聴診を徹底的に叩き込むプログラムが欠けていることこそ元凶と言わねばならない。内科のポリクリ(臨床実習)の期間は限られており、ポリクリもマンツーマン形式ではなくグループ実習でやったのではなかなか成果が上がらない。

 次の機会は、初期臨床研修の2年間だが、内科系ローテート期間はこれまた限られているし、指導に当たる上司の力量、熱意によって得られるものも多かったり少なかったりする。
 
 しかし、肝心なのは本人の意欲であり、視触打聴診こそ臨床医の基礎を成すものでしっかり身に付けておかねばならない、という自覚である。基礎であるという認識には、臨床医に何より肝要なのは患者とのスキンシップであるとわきまえていることも含まれる。

 マナー篇でも書いたが、診察に当たってまず重要なのは、患者の顔色、表情、歩き方、起居動作をしっかり見据えることである。脈を取り、呼吸器症状を訴えて来たなら必ず聴診器を当て、消化器症状を訴えているならベッドに横になってもらって腹部の触診や打診を行う。若いときはさまにならないから気恥ずかしい思いが先立ったり、自信も持てないだろうが、後で行うX線検査や内視鏡検査の所見と照合する習慣を付ければ、視触打聴診の意義と価値が分かってくる。少なくとも乾性ラ音と湿性ラ音の鑑別が付けば、聴診はこよなく楽しいものとなる。

著者プロフィール

大鐘 稔彦(南あわじ市国民健康保険阿那賀診療所院長)●おおがね としひこ氏。1968年京大卒。民間病院の院長、外科部長などを経て、99年より南あわじ市国民健康保険阿那賀診療所(兵庫県南あわじ市)院長。

連載の紹介

研修医必見!臨床のスキルとマナー
患者に選ばれる医師になるには?医療訴訟に巻き込まれることなく的確な医療を実践するには? ベテラン医が、自身が体験したエピソードをベースに、診療のコツや臨床医としてのマナーを説きます。

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