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【連載第11回 マナー編(11)】
患者の前で口論するな

2007/04/02

 前回、研修医時代に古参の看護師に患者の面前で大恥をかかされたことを書いたが、一般的には逆のケースが多い。つまり、医師が患者の面前で看護師をどやしつけたりするのをよく見聞きする。

オーナー院長でも専制君主となるな
 知人の看護師がある整形外科医院に勤めていた時、同僚の若い看護師がよく院長に怒鳴られたという。確かに不器用で要領が悪く、医師が求めるものをすぐに出せない。するとすかさず、
「何モタモタしてんだっ!早くしろっ!」
 と叱声が飛ぶ。

 例えば、関節穿刺やブロックの時などで、患者を寝かせたり横にしたら医者はすぐさま作業に取りかかりたいから1分も待てない。急かされた看護師の方は焦ってエア(空気)の入ったまま注射器を差し出したりする。寛大な医者なら自分でエアを抜くだろうに、その院長は、
「馬鹿もんっ!空気が入っとるじゃないか!」
 と突き返したという。

 若い看護師は身を縮めて注射器を受け取りエアを抜きにかかるが、既に手が震えて肝心の薬液まで漏らしてしまうことがある。それをまた医師が怒声とともにとがめる。

 患者はたまったものではない。ウデの程は分からないが、医者はとにかく短気で横柄、看護師は未熟で危なっかしい、そして両者の人間関係はギクシャクとし、職場全体の雰囲気が張り詰めて何となく息苦しく、居心地が悪い。私が初診の患者なら、こんな医院には二度と行くまいと思うだろう。

 医師と看護師、患者の関係は、父と母、そして子供のそれに似ている。父母が目の前でいつもいさかいをしていたら子供は居たたまれなくなる。中には生涯トラウマを負うこともある。どんなに不仲でも子供の前では仲の良い夫婦を演じる――。それが親たるものの、せめてものたしなみであろう。

スタッフのプライドを重んじよ
 一人院長の診療所では医者が絶対的な権力者で思うままになるかも知れないが、スタッフへの思いやりを欠く言動は慎むべきである。

著者プロフィール

大鐘 稔彦(南あわじ市国民健康保険阿那賀診療所院長)●おおがね としひこ氏。1968年京大卒。民間病院の院長、外科部長などを経て、99年より南あわじ市国民健康保険阿那賀診療所(兵庫県南あわじ市)院長。

連載の紹介

研修医必見!臨床のスキルとマナー
患者に選ばれる医師になるには?医療訴訟に巻き込まれることなく的確な医療を実践するには? ベテラン医が、自身が体験したエピソードをベースに、診療のコツや臨床医としてのマナーを説きます。

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