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女性アスリート、「細い」だけで骨折リスク!?

2017/01/10
能瀬さやか(国立スポーツ科学センタースポーツクリニック婦人科)

 女性アスリートの活躍や東京オリンピック・パラリンピック招致決定も影響し、様々な立場から女性アスリートを支援する動きが盛んになってきています。

 近年、産婦人科医の中でもスポーツに参加する女性の健康問題が取り上げられるようになり、日本産科婦人科学会でも女性アスリートに関する調査研究が始まっています。ここでは、女性アスリートに関する調査研究の結果などをお伝えしていければと思っています。

 第1回は、女性アスリートと無月経の問題です。「アスリート」と聞くと、トップレベルの選手のみを想像する方も多いと思いますが、「競技会に参加しているもの」はアスリートという扱いになりますから、決してトップ選手だけを指す言葉ではありません。身近に女性アスリートは多数存在するということを前提に読んでいただければ幸いです。

 女性アスリートに多い健康問題として、無月経、Low energy availability(利用可能エネルギー不足、ここではエネルギー不足と訳す)、骨粗鬆症が挙げられ、米国スポーツ医学会ではこれらを「女性アスリートの三主徴」と呼び、女性アスリートの健康に悪影響を与える因子として、1990年代から警鐘を鳴らしています。エネルギー不足とは、運動消費エネルギーに対し、食事からの摂取エネルギーが不足している状態を指し、エネルギー不足になると脳からの黄体化ホルモンの周期的な分泌が抑制され、無月経になると考えられています。

 無月経による低エストロゲン状態やエネルギー不足による低体重や低栄養は骨粗鬆症につながり、三主徴がみられる女性アスリートでは疲労骨折のリスクが高いことが多く報告されています。疲労骨折のリスク因子は様々ありますが、産婦人科医の立場からはこれら三主徴の予防や治療は障害予防の点で重要であると考えています。

 低骨量や骨粗鬆症は、閉経後の女性の疾患として捉えられがちですが、アスリートの診療をしていると10歳代、20歳代でも、低骨量や骨粗鬆症を抱えている女性アスリートは珍しくありません。これまで、若年者において骨密度を測定する機会は少なかったため、このような問題に気付きにくかったのではないかと思っています。最大骨量を獲得する時期は20歳ごろですが、この頃までに最大骨量を獲得できないと、疲労骨折のリスクを高めるだけでなく、競技生活を終えた後の骨折リスクも高くなります。

 日本でこの三主徴の問題が取り上げられるようになったのは、2~3年前からです。2014年に国立スポーツ科学センターと日本産科婦人科学会の共同研究で、全国のアスリート約2000人を対象に大規模な調査を実施し、この結果、無月経や月経不順の月経周期異常を抱えている日本の女性アスリートの実態が明らかになり、問題意識が高まっています。

 共同研究の結果を、(1)BMI別、(2)競技特性別、(3)競技レベル別に分けて紹介します。まず、BMI別にみると、BMIが18.5未満の選手では、BMIが18.5以上の選手と比較すると有意に無月経の頻度が高いことが分かりました(図1)。

著者プロフィール

能瀬さやか(東京大学附属病院女性診療科)●のせさやか氏。北里大卒。2006年東京大学産婦人科学教室入局後、国立スポーツ科学センターなどを経て、2017年2月より現職。日本産科婦人科学会専門医、日本体育協会公認スポーツドクター、日本アンチドーピング機構公認ドーピングコントロールオフィサー、日本障がい者スポーツ協会公認障がい者スポーツ医。

連載の紹介

婦人科医が指南!「女性選手の健康支援」
2020年、東京でオリンピック・パラリンピックが開催される。多くのアスリートが出場を夢見てスポーツに打ち込んでいるが、女性選手は、トップ選手に限らず、月経周期異常や月経困難症など女性特有の健康問題を抱えがち。婦人科医でスポーツドクターの能瀬氏が、女性選手特有の健康問題とその解決法を解説する。

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