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メタゲノム解析で、細菌叢のゲノムをまるっと解読!
あなたに住み着く細菌叢、マイクロバイオーム

2015/03/16
西村尚子=サイエンスライター

 最新の研究によると、生命の起源は、海底の熱水孔よりもさらに奥深い地殻で誕生した超好熱発酵菌だとされる。水素や二酸化炭素を利用する超好熱メタン菌や、この微生物が作り出す有機物を利用するサーモコッカスなどである。こうした「地球を食べる微生物」は、光を利用するもの、他生物の細胞内に潜り込んで小器官へと姿を変えるもの、細胞に感染するものなどに進化し、生息域を地殻から海底へ、さらに海中、河川、湖水、陸上へと広げていった。

 人体もまた、微生物にとって居心地の良い住処である。胎児期はほぼ無菌状態だが、生まれ出るや否や、孔という孔に微生物が住み着く。その総数は京(10の16乗)のオーダーに迫り、成人では体重の数パーセントを占めるとされる。米国立衛生研究所(NIH)は、国家プロジェクトとしてヒト由来の細菌叢マイクロバイオーム)を解析し、「アマゾンの熱帯雨林とサハラ砂漠に生息する微生物群に匹敵するほど多様」と表現している。

 このようなマイクロバイオームは、口腔消化管といったように部位ごとで生体と相互作用し、防御機能や免疫活性機能を果たすほか、感染症免疫疾患などと関連することもある。研究歴が特に長いのは、嫌気性細菌を中心に約1000種以上、少なくとも100兆個がいるとされる腸内のマイクロバイオームだ。これまでに、悪玉菌の感染を妨ぐ、免疫活性を上げる、ヒトが消化できない栄養分を消化するといった機能がある一方で、バランスが崩れると、大腸癌アレルギーメタボリックシンドロームなどを引き起こすことが分かっていた。

 ただし、既存のデータはあくまでも推定によるもので、実測に基づくものではなかった。ところが2005年以降、従来の蛍光キャピラリー式ではなく、光検出を行うパイロシーケンス式を用いた次世代シーケンサーが開発されたことで状況が一変した。

著者プロフィール

西村尚子●にしむら なおこ氏。1991年早稲田大学人間科学部人間基礎科学科卒業。専攻は細胞生物学。約10年にわたり科学雑誌『ニュートン』の編集に携わった後、フリーランスのサイエンスライターとして活躍中。主な著書に『知っているようで知らない免疫の話』(技術評論社)、『花はなぜ咲くの?』(化学同人)など。

連載の紹介

西村尚子の「サイエンス最先端」
ネイチャー アジア・パシフィックの特約記者や、サイエンス・メディア・センター(SMC)の非常勤スタッフとしても活動する筆者が、医療・医学につながる最先端の科学ニュースを、楽しく、分かりやすく紹介します。

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