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Dr.西&Dr.宮森の「高齢者診療はエビデンスだけじゃいかんのです」

第21回
「ウィズコロナ時代」に僕らができる緩和ケア

2020/06/17
西 智弘(川崎市立井田病院かわさき総合ケアセンター)

 アサガワさんは、80歳の女性。乳癌の肝転移で抗癌薬治療を続けてきたが、その効果が徐々に乏しくなり、緩和ケアに専念することになった。しばらくは緩和ケア外来に通院していたが、1年ほどで徐々に肝不全が進行し、黄疸が出現した。自宅での生活も不自由になってきたため、「入院をするしかないでしょうかね」と、Dr.ニシと相談し、緩和ケア病棟に入院となった。入院後、ステロイドの導入などで多少なりとも体調が落ち着いたアサガワさん。夫や、近隣に住んでいた息子夫婦、そして孫たちなどが代わる代わる病棟に訪れ、まるで第2の自宅のように楽しく過ごしていた。

 しかし折悪く、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)がまん延し、Dr.ニシの病院がある地域でもCOVID-19の患者が出始めた。病院は院内感染を予防するため、新規患者の受け入れを制限したり、予定手術の中止や延期などに取り組み始めた。入院患者についても、外部からの面会は制限し、できる限り自宅に戻るように促した。緩和ケア病棟も例外ではなく、アサガワさんの家族も面会を制限され、来院できるのは週に1度1人のみ。しかも15分ほどという時間制限もかけられた。幼い孫たちに至っては、完全に面会できる機会を奪われる形となった。それからというもの、アサガワさんはすっかり元気がなくなり、日中もぼーっとする時間が増え、夜間に軽度のせん妄のような症状も出始めていた。


著者プロフィール

西智弘(川崎市立井田病院 かわさき総合ケアセンター腫瘍内科/緩和ケア内科)●にし ともひろ氏。2005年北海道大学卒。家庭医療専門医を志し、室蘭日鋼記念病院で初期研修後、緩和ケアに魅了され緩和ケア・腫瘍内科医に転向。川崎市立井田病院、栃木県立がんセンター腫瘍内科を経て、2012年から現職。

連載の紹介

Dr.西&Dr.宮森の「高齢者診療はエビデンスだけじゃいかんのです」
多様な患者さんの姿をユニークに捉え、楽しみながら高齢者診療を行う宮森正氏の「経験から得た言葉や技術」を、それを支えるエビデンスと共に愛弟子の西智弘氏が綴ります。腫瘍内科と緩和ケアの統合を目指し、腫瘍内科・緩和ケア・在宅診療を、ケアセンター科が一括して担う川崎市立井田病院ならではの取り組みも併せて紹介していきます。

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