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趙章恩の「韓国スマートヘルスケア最前線」
韓国で「診療情報の共有化」がスタート
8月からプラットフォームの構築に着手、国は本腰も現場は反発

2015/09/10
趙 章恩=ITジャーナリスト

韓国の大邱市に数ある病院の中でも、長い歴史を持つKeimyung University Dongsan Medical Center の外観(この病院は本文とは直接関係ありません)

 韓国の保健政策を担当する保健福祉部(部は省)は2015年8月から、全国の医療機関の診療情報を医療機関同士で共有できるプラットフォームの構築に着手した。個人もこのプラットフォームにアクセスすると、全国の医療機関で受診した診療情報を確認できるようになる。

 「国家診療情報共同活用事業」と呼ぶこのプロジェクトは2004年に始まったもの。保健・医療用語の標準化作業や、医院と総合病院間・地域病院間の診療情報共有実証実験を経て、ようやくプラットフォーム構築のスタートラインに立った。準備期間だけで12年に及ぶ一大プロジェクトだ。

 2015年内にシステム設計を終え、2017年中には全国の医療機関が本格的にプラットフォーム上で診療情報を相互利用できるようにする。医療機関が共有できる診療情報は、患者の同意を得た項目だけにする。

 プラットフォーム構築はキャリア大手のKTと名門私立大学である延世(ヨンセ)大学病院の合弁会社である「フーヘルスケア」、およびシステム構築会社の「ティープラス」のコンソーシアムが担当する。

患者にも医療機関にもメリット見込む
 診療情報の共有とは、地域や規模に関係なくすべての医療機関が患者の診療情報・検査記録などの医療情報を共通プラットフォーム上に保存し、共同活用することを指す。医療機関の間で行う診療依頼や転院手続きもこのプラットフォーム上で行えるため、患者は書類をそろえて別の病院に行く必要がなくなる。転院の際に診療記録のコピーを持参しなくても治療を継続できるので、手数料や診療費を節約することもできる。

 医療機関の間で診療情報などを共有できるようになれば、患者の立場からは、病院を変えるたびに検査し直す必要がなくなり、すぐに専門医の診療を開始できる。重複検査がなくなれば、患者が病院ですごす時間に検査などによる苦痛を減らせるメリットもある。複数の病院に通う患者の場合、薬手帳を持っていなくても、医療機関が確認して同じ薬を重複処方しないよう調整可能だ。

 救急で病院に運ばれた時も、プラットフォーム上の診療情報を参照してすぐに処置してもらえる。例えばMERSのような感染病が発生した場合、プラットフォーム上の診療情報を確認すれば、感染者と同じ病室にいたとか、感染者と同じ病院に通っていたなどの情報がすぐわかり、すばやく対処できる。

 保健福祉部は、国家診療情報共同活用事業によって「患者の基本情報、診断内容、投薬内容、検査内容、予防接種、手術情報、アレルギー情報など患者の状態を把握するために不可欠な情報を共有でき、過剰診療や誤診の危険性が減る。その結果、医療サービスの質が向上する」としている。他にも「医療機関同士の共同診療や協力診療が増えることで医療サービスの地域的不均等を緩和できる」「初期検診を省略できるので国民の医療費を節約できる」「医院から介護施設まで患者を持続的に管理できる」などのメリットを挙げる。

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