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趙章恩の「韓国スマートヘルスケア最前線」
韓国で患者データ25億件が漏洩か
診療記録と処方箋を1件当たり1ウォン(約0.1円)で購入した疑い

2015/04/18
趙 章恩=ITジャーナリスト

 ソウル放送(SBS)をはじめとする複数の韓国メディアは2015年4月8日、医療情報コンサルティングのグローバル企業である米IMS Health社の韓国法人IMS Health Koreaが、2008年以降に韓国人の診療記録と処方箋、計25億件を1件当たり1ウォン(約0.1円)で購入し、米国本社にわたす個人情報侵害を犯した疑いがあると報じた。韓国検察の個人情報犯罪政府合同捜査団が公表した捜査内容を基にした報道である。

 検察によれば、IMS Health Koreaの米国本社はこの情報を加工し、どの病院がどの疾患にどの薬をよく処方するのか、年齢別・地域別にどの薬がよく処方されたのか、といった統計資料にまとめて韓国の製薬会社に高い値段で販売していたという。

電算化代行業者などが横流し
 診療記録と処方箋は、重要な個人情報だ。ある患者がいつどのような疾患でどの薬を処方されたのかといった内容が、名前や国民ID(住民登録番号)とともに記載されている。日本のケースに置き換えれば、2015年秋に始まるマイナンバーと名前入りの電子カルテ、電子レセプトを多国籍企業が安く買い取り、米国にある本社がその情報を使って日本人の年代別・性別の病歴や主に使う薬などを分析。その情報を日本の製薬会社に高い値段で売っていたことに相当する。

 韓国メディアによれば、診療記録と処方箋をIMS Health Koreaに販売したのは、韓国5000カ所以上の病院の診療記録を電算化(電子医務記録)して健康保険審査評価院に送信する代行業者と、全国の薬局に電子処方箋関連プログラムを納品している大韓薬師会傘下の財団法人である薬学情報院だという。ここで健康保険審査評価院は、日本における診療報酬支払基金のような役割をする機関で、医療機関などから届いた医療費の請求が適正かどうかを審査し、医療費を支給する。

 この代行業者は2015年1月に、検察の取り調べを受けた。その結果、この代行業者は、患者の電子医務記録を健康保険審査評価院に送信する過程で、診療記録を外部サーバーにも同時に保存するようにしていたことが明らかになった。この手法で数億件に及ぶ電子医務記録を無断で手に入れ、IMS Health Koreaに販売していたという。

「個人は特定できないデータ」と反論
 病院側は、患者の電子医務記録が外部サーバーにも保存されていたことをまったく知らなかったとしている。薬学情報院も同じく、電子処方箋を無断収集した疑いで検察が2013年12月に取り調べを行い、2014年7月には役員らを起訴している。その際、薬学情報院が無断で収集した個人情報を購入したとしてIMS Health Koreaも捜査の対象になったが、当時は証拠不十分でIMS Health Koreaの関係者が起訴されることはなかった。

 韓国の医療法は「誰であろうと正当な事由なく電子医務記録に保存した個人情報を探知、漏えい、変造、棄損してはらない」、さらには「患者の診療記録と個人情報を他の医療機関と共有する必要がある場合は患者の同意を得ること」と規定している。個人情報保護法でも「健康などに関する情報、その他情報主体の私生活を顕著に侵害する恐れがある敏感情報に関しては、情報主体の同意なくこれを収集・利用・提供してはならない」と規定している。

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