日経メディカルのロゴ画像

医療データベースの活用には法整備が不可欠
「医療情報の活用なしに医学の発展はありえない」

2015/02/28
近藤 寿成=スプール

東京大学医療経営政策学講座特任准教授の山本隆一氏

 医療におけるデータ活用の重要性やプライバシー保護の必要性、現状の問題点はどこにあるのか――。2015年2月12日に開催された平成26年度日医総研シンポジウム「日本における医療ビッグデータの現状と未来」において、東京大学大学院医学系研究科医療経営政策学講座特任准教授の山本隆一氏が「医療情報大規模データベースとプライバシーの保護」をテーマに講演した。

 山本氏はまず、死因別にみた死亡率の推移グラフから「1947年と比較して、近年は長い経過の病気が増えた」ことを示し、医療と健康に関するさまざまな情報が「人の生涯を通じて膨大に生じている」ことに触れた。しかし、その膨大な情報も、紙とそろばんしかない人力の時代では適切に扱うことができない。そのため、それらの情報は「消えていく」あるいは「本人もどこにあるかわからない」という状況だったという。

 しかし、こうした状況はコンピュータの登場によって大きく変化し、分析した情報をさまざま分野に活用することができるようになった。山本氏は、従来であれば蓄積できずに捨ててきた情報を「しっかり活用して新しい価値を見出すこと」が今の時代のキーワードであり、それこそが「データ指向時代と呼ばれる由縁だ」と説明した。

 このような変化に伴って、「日本でも医療関係のデータベースができ始めている」と山本氏は語る。例えば、厚生労働省が整備したレセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)や医薬品の安全対策等における医療関係データベース(MID-NETプロジェクト)、国保データベースKDB、介護認定データベースなどが作られており、自然言語解析などの技術を用いることで、さまざまな活用が期待されている。

NDBのデータを閲覧できる施設がオープン
 さらに山本氏は、「将来的には、エビデンスに基づく政策や医療が重要となるため、必ず使われるようになるだろう」と断言した。しかし、「むやみに使っていいものではなく、解決すべき課題がある」とも述べ、共通IDを利用した「目的の異なるデータベースの結合」や個人の権利侵害や差別を生まないような「データ指向時代に適したプライバシーの保護」などの必要性を説いた。

 次に、医療情報データベースの整備について、レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)を例にして紹介した。山本氏によれば、NDBは800億円規模のレセプト情報と1億円規模の特定健診等情報を保持しており、サンプルデータも提供されている。

 ただし、これらのデータは完全に匿名化されているわけではないため、データ提供には十分な安全管理が必要となる。しかし、この「十分な安全管理」という部分は非常にハードルが高く、一般の企業や研究室などでは「申請書にある安全管理項目の不備によってデータが提供されないケースが多い」という。

 この現状を打破するため、2015年4月にNDBのデータが閲覧できる施設「オンサイトリサーチセンター」が東京で2カ所、京都で1カ所オープンする予定だ。ここを訪れれば「比較的自由にデータを参照したり分析したりできるようになる」と山本氏は説明する。さらに同センターでは、プライバシーを保護したままデータを分析できるPPDM(Privacy Preserving Data Mining)の導入も予定していると付け加えた。

 なお、NDBからのデータ提供例としては、2010年に実施された模擬提供から二次医療圏と疾患の関係性を示すデータが紹介された。このデータでは「脳梗塞などの患者は、ほぼ同じ医療圏の医療機関で受診している」のに対して、「乳がんではまったく異なり、二次医療圏を越えて受診している人も多い」という結果をグラフで解説。二次医療圏は疾患を意識して考える必要があることが、「レセプト情報を分析するだけでもわかる」ことを強調した。

連載の紹介

日経デジタルヘルス Selection
医療・健康・介護の技術革新によって生まれる新産業「デジタルヘルス」。その技術動向やビジネス環境の変化について最新情報を発信し、既存の業界の枠を超えた相互連携の場を提供するのが、姉妹サイト「日経デジタルヘルス」です。本コラムでは、日経デジタルヘルスのオリジナル記事の中から、医療関係者に関心が高いと思われる記事をセレクトして掲載します。

この記事を読んでいる人におすすめ