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医療情報の公共性を殺してはならない
プライバシー性と公共性のバランスの取り方は難しい

2015/02/20
大下 淳一=日経デジタルヘルス

東京大学法学部教授の樋口範雄氏
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 医療情報の「個人情報」としての側面と、匿名化した医療情報の「公共性」のバランスを、どのように取るか――。2015年1月17日に東京都内で開催された「医療情報の利活用と個人情報保護シンポジウム」(主催:東京大学大学院医学系研究科医療経営政策学講座)では、こうしたテーマを掲げたパネルディスカッションが開かれた(関連記事)。パネリストの1人として、「医療情報と個人情報保護の法的側面」を論じたのが東京大学法学部教授の樋口範雄氏。個人情報保護を盾に、あらゆる場面で個人情報の利用を許そうとしない風潮に警鐘を鳴らした。

 2003年に個人情報保護法が成立した後、「『個人情報だから』という決まり文句で、すべてをシャットダウンする過剰反応が社会に生まれた」と樋口氏は指摘する。個人情報の保護を解除できるのは情報保有者の同意だけというロジックによって「過剰な同意主義も生んだ」。

 こうした風潮は、傷害事件や死亡事故が起こった場合の警察の捜査などにも影響を与えているとし、いくつかの事例を挙げた。「死因の分からない遺体があり、警察が検視に行った。遺体の近くに病院の診察券があったので、その病院に病歴などを尋ねたが『本人か家族の同意がないと教えられない』と断られた」というのがその1つだ。

 そもそも、「個人情報保護法」という名称に問題があったと樋口氏は見る。「個人情報保護『および活用法』とすべきだった」。個人情報の保護を重視するあまり、どのような場合にどのような形でならその適切な利用が認められるか、という視点が抜け落ちていたとの指摘だ。

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