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認知行動療法の提供に地域差があるのはなぜか?

2019/05/30
吉村 健佑(千葉大学医学部附属病院特任講師/産業医)

 この連載では、厚生労働省のウェブサイトで公開されている「NDBオープンデータ」を用いて、医療の実態を「都道府県別」に見ていきます。今回注目するのは診療行為です。中でも精神科の専門治療である「認知行動療法」を例に見える化してみましょう。

「診療行為」の地域差を可視化する
 前回までは、バルプロ酸(商品名デパケンなど)、エチゾラム(商品名デパスなど)の薬剤を例に処方状況を可視化しました。NDBオープンデータは、薬剤だけでなく、診療行為の算定回数についても集計・公開されています。

 例えば、「第3回NDBオープンデータ解説編」によると、医科診療行為だけで、診療行為と加算項目のすべて、つまり外来4037項目、入院5882項目、その他376項目、合計すると実に1万295項目が公開されています。逆にいえば、医科の診療行為はこの1万余りの項目の組み合わせによって提供されていると言えます。

 精神科に関係する項目は精神科専門療法とその加算項目で、外来113項目、入院42項目の合計155項目が公開されています。今回はその中で、外来での「認知行動療法」に注目し都道府県別の地域差を紹介します。

認知行動療法の都道府県別算定状況
 認知行動療法とは、「人間の気分が認知(物事のとらえ方や考え方)や行動によって影響を受けるという理解に基づき、認知や行動のあり方を患者とともに検討することを通じて、非適応的な行動の修正や問題解決を行い、気分を改善させる精神療法」と説明されます1)。うつ病や不安障害に対して、薬物療法と同等かそれ以上の効果があるとされ、イギリスやアメリカの診療ガイドラインではうつ病・不安障害の治療の第一選択とされています。しかし、我が国では専門家も少なく、患者の数の割には十分には提供されていないとい言われています2)

 医科点数表には「認知療法・認知行動療法」の名称で収載されていますが、ここではまとめて「認知行動療法」と呼ぶことにします。診療報酬点数は、うつ病などの気分障害や強迫症などの不安障害、神経性過食症などの患者に対し、厚生労働省の指定した各種治療マニュアルに沿って1回30分以上をかけて行った場合に、一連の治療につき16回を超えない範囲で算定できます。診療報酬は、今回分析する2017年までは1回につき420点ないし500点、2018年以降は1回につき480点(医師による実施)で、ほとんどが外来診療で提供されています。

 今回は公表されているすべてのNDBオープンデータ(第1回から第3回)を解析し、2014~2016年度の3年間の都道府県別の認知行動療法の総計を見える化しました(図1)。

著者プロフィール

吉村健佑(千葉大学医学部附属病院 特任講師/産業医)●よしむらけんすけ氏。2007年千葉大学医学部卒業。公衆衛生学修士、医学博士。精神科医・産業医としての臨床現場を経て、2015年より3年間、厚生労働省にて医療政策と政策研究に取り組む。2018年4月より現職。

連載の紹介

NDBオープンデータで見る日本の医療
精神科医で産業医、元・厚生労働省の医系技官が、レセプトデータを駆使して日本の医療を「丸見え」にしていきます。もはや「個人の印象」で医療を語る時代ではありません。えっ!こんなことになってんの?という驚きの医療の実態を一緒に見ていきましょう。

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