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外来で年間12億錠も出される大問題なあの薬

2019/01/30
吉村 健佑(千葉大学医学部附属病院特任講師/産業医)

 この連載初回となった前回記事(「若い女性にバルプロ酸」処方していませんか?)は多くの方に読んでいただいたようで、うれしいです。今回も、厚生労働省のウェブサイトで公開されている「NDBオープンデータ」を用いて、様々な診療科領域の「男女別と年齢階級別分析」の実例を紹介していきます。今回は、国民的に人気の高い「抗不安薬・睡眠薬」を見ていきましょう。

エチゾラムの男女別・年齢階級別処方状況
 まず、外来で提供されたベンゾジアゼピン(BZ)系薬剤の処方状況を、「エチゾラム」(商品名デパスなど)を例に可視化しました。

 エチゾラムは短時間作用型のベンゾジアゼピン系睡眠薬・抗不安薬であり、半減期は6時間、最高血中濃度到達時間(Tmax)は3時間とされています。他のBZ系薬剤同様に、鎮静・催眠作用、抗不安作用、抗けいれん作用、筋弛緩作用などの薬理作用があり、「睡眠薬」ないし「不安・緊張を和らげる薬剤」として使用されています。添付文書に記載された適応症としては「不安・緊張・抑うつ・神経衰弱症状・睡眠障害」に加え「頸椎症・腰痛症・筋収縮性頭痛」が挙げられています。精神科・心療内科のみならず、一般の内科、整形外科などでも頻繁に処方されているのが実情です。

 使用上問題となるのは75歳以上の高齢者に対するケースで、筋弛緩作用からくる転倒・骨折や夜間せん妄、誤嚥性肺炎の誘発、認知機能の低下、エチゾラムそのものに対する耐性形成・乱用や依存などが懸念されています。日本老年医学会の『高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015』1)によると、「高齢者では可能な限り使用を控える」とされています。2016年10月に厚生労働省により第3種向精神薬に指定されて以降は最大30日間の処方日数の制限が開始されていますが、それまでは90日処方などが行われていました。そんなわけで、エチゾラムは「要注意薬剤」といえるでしょう。

 さて、今回はNDBオープンデータを解析して2016年度の男女別・年齢階級別の内訳をエチゾラム(先発、後発含む)の0.5mg錠および1.0mg錠の処方錠数の総計を見える化しました(図1、表1)。

著者プロフィール

吉村健佑(千葉大学医学部附属病院 特任講師/産業医)●よしむらけんすけ氏。2007年千葉大学医学部卒業。公衆衛生学修士、医学博士。精神科医・産業医としての臨床現場を経て、2015年より3年間、厚生労働省にて医療政策と政策研究に取り組む。2018年4月より現職。

連載の紹介

NDBオープンデータで見る日本の医療
精神科医で産業医、元・厚生労働省の医系技官が、レセプトデータを駆使して日本の医療を「丸見え」にしていきます。もはや「個人の印象」で医療を語る時代ではありません。えっ!こんなことになってんの?という驚きの医療の実態を一緒に見ていきましょう。

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