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医師に落ち度のない「事故」をどう収めるか

2018/05/22
尾内 康彦(大阪府保険医協会)

 私は日々、医療機関の様々なトラブル相談に乗っているので、大抵のトラブルには動じないようになってきている。しかし、「医療事故」という言葉を聞くと、やはり緊張感が高まる。

 「医療事故」が意味する内容は幅広い。医療機関側の落ち度によって、患者が本来であれば被らずに済んだデメリットを受けてしまう「医療過誤」は、医療事故の中の1つのカテゴリーだ。一定の医療水準下では予見可能で、技術的に避けることができたのに、診療ミスや注意の欠如などにより、患者に損害を生じさせた場合には、賠償責任が生じる。

 しかし、「医療事故」の中には、医療機関側が賠償責任を問われないトラブルもある。医療行為の過程においては、不可抗力によって不良な事態が発生し、医療機関側に落ち度がなくても、患者にデメリットをもたらすケースもあるからだ。

 私の元に寄せられるトラブル相談では、相談者からの第一報を聞いただけでは、このどちらに当たるのか分からない。相談者から話を詳しく聞いていっても、なかなか判別できないこともある。また、医療機関側に明確な落ち度はなかったとしても、患者に起きてしまった悪い結果に関して、医師が道義的な責任を感じているケースもよくある。そうした場合には、患者側へのスタンスとして、「落ち度がないから何もしない」のではなく、この先、自分にどんな協力・支援ができるだろうかというマインドを持って、患者と接していくべきだろうと思う。

 今回は、患者に悪い結果が起きてしまった事例を通じて、これらのことをみなさんと一緒に考えてみたい。

著者プロフィール

尾内康彦(大阪府保険医協会事務局参与)●おのうち・やすひこ氏。大阪外国語大学卒。1979年大阪府保険医協会に入局。年400件以上の医療機関トラブルの相談に乗り、「なにわのトラブルバスター」の異名を持つ。著書に『患者トラブルを解決する「技術」』(日経BP)がある。

連載の紹介

なにわのトラブルバスターの「患者トラブル解決術」
病医院を構えている限り、いつどんな患者がやって来るかわかりません。いったん患者トラブルが発生し、解決に手間取ると、対応する職員の疲弊、患者の減少という悪循環を招き、経営の土台が揺らぎかねません。筆者が相談に乗った事例を紹介しながら、患者トラブル解決の「真髄」に迫ります。
著者の最新刊『続・患者トラブルを解決する「技術」』好評販売中

 ますます高度化、複雑化する患者トラブルに、医療機関はどう対峙していけばいいのか。ご好評をいただいた前著『患者トラブルを解決する「技術」』の続編として、解決難易度の高い患者トラブルの対処法を体系的にまとめました。前著が基礎編、本書が応用編の位置づけですが、本書だけでも基本が押さえられるように構成しています。(尾内康彦著、日経BP社、2052円税込)

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