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トラブルを迎え撃つ心構え(その5)
最も難しい! 精神疾患が疑われる問題患者への対応

2012/09/10

 最近、よく相談を受けるのは、問題行為を繰り返し、次にどんな行動に出るか全く読めない患者にどう対応したらいいか、というものだ。医科関係だけではなく歯科領域からも多く相談が寄せられている。

 そうしたケースでは、患者は治療のために通院している疾患とは別に、薬物中毒・依存症、軽度の認知症統合失調症、そして境界性パーソナリティー障害などを疑わざるを得ないことがよくある。患者トラブルの中でも、情緒不安定・不穏状態にある患者への対応が最も難しいと私は思っている。なぜなら、通常のクレーム処理の手法が全く通用しないからだ。

 読者の中には、医療機関なのだから、問題を起こしている患者の中毒症状や精神疾患を治療すべきではないか、という意見があるかもしれない。確かに、その意見は正論であるし、状況が許せば賛成である。しかし、実際に、行動が読めない患者が現場で問題を引き起こすと、職員に危険が及ぶ可能性が出てくる。そのため、私の対応方針としてはまず、職員の安全確保が最優先となる。

 次に問題行為をやめさせる対策を打ち、それと並行して患者の治療を考える、という順番で取り組むのが基本戦略だ。

 問題行為をやめさせるために、特に効果的な手段があるわけではない。結局、トラブルを起こしている患者の家族や、精神疾患で他院に通院しているのならその主治医の協力を得るなど、患者に影響力のあるチャンネルを何とか探し出し、そのルートを通じて問題を解決していく方法を採ることが多い。

 では実例を見てみよう。

著者プロフィール

尾内康彦(大阪府保険医協会事務局参与)●おのうち・やすひこ氏。大阪外国語大学卒。1979年大阪府保険医協会に入局。年400件以上の医療機関トラブルの相談に乗り、「なにわのトラブルバスター」の異名を持つ。著書に『患者トラブルを解決する「技術」』(日経BP)がある。

連載の紹介

なにわのトラブルバスターの「患者トラブル解決術」
病医院を構えている限り、いつどんな患者がやって来るかわかりません。いったん患者トラブルが発生し、解決に手間取ると、対応する職員の疲弊、患者の減少という悪循環を招き、経営の土台が揺らぎかねません。筆者が相談に乗った事例を紹介しながら、患者トラブル解決の「真髄」に迫ります。
著者の最新刊『続・患者トラブルを解決する「技術」』好評販売中

 ますます高度化、複雑化する患者トラブルに、医療機関はどう対峙していけばいいのか。ご好評をいただいた前著『患者トラブルを解決する「技術」』の続編として、解決難易度の高い患者トラブルの対処法を体系的にまとめました。前著が基礎編、本書が応用編の位置づけですが、本書だけでも基本が押さえられるように構成しています。(尾内康彦著、日経BP社、2052円税込)

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