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トラブルを迎え撃つ心構え(その4)
院長の誤解がハードクレーマーをのさばらせる

2012/08/27

 初期対応をうまくこなせば、トラブルが起きても被害が軽く済むということは、どんなトラブル解決本にも載っている基本中の基本だ。みんな頭ではちゃんと分かっている 。しかし、実践となるとなかなかできない。それはなぜだろうかと考えてみると、最終的には、院長の経営姿勢や病医院の組織風土に行き着くと思う。

 「トラブルはあってはならないことだ」「患者とトラブルを起こすのは職員の対応に至らない部分があるから…」。組織にこのような誤った考えがまかり通っていると、初期対応がおろそかになり、患者トラブルの解決まで時間がかかったり、こじれたりしやすい。

トラブルに弱い組織ほど当事者に責任を押しつける
 「トラブルはあってはならない」という経営風土の下では、職員がトラブルの存在自体を隠そうとしたり、見て見ぬふりをしようとしたりする。「いつか誰かが何とかしてくれるのではないか」「時間が解決してくれる」などと考え、トラブル解決へのアクションを誰も起こそうとしない、といった状況が起きやすい。

 また、「患者とトラブルを起こすのは、職員の対応に至らない部分があるから」という考え方にとらわれている人や職場も依然として多い。医療に携わる方たちは、皆さん真面目で責任感が強い。そして、やさしい。どんなに患者がわがまま勝手に振る舞っても、ひょっとしたらその原因は自分にあるのではないか、と思い悩む人が珍しくない。こうした風潮の職場では、トラブルを起こした当事者に責任が押しつけられてしまいがちだ。

 トラブルに関わった職員は、自分に落ち度があったかもしれないと悩み、傷つき、落ち込んでいる。その人に対して、今度は味方であるはずの組織の方から「おまえの責任だ。自分で何とかしろ」と攻撃したら、完全に追い込むことになってしまう。現場がバラバラの状態で、トラブルを解決することなどできるわけがない。

「起きたこと」ではなく「解決しないこと」が問題だ
 強い組織ほど、トラブルを前向きに捉える。問題のありかを組織全員で認識し、全員で解決策を考え、実行する。今大事なのは何か? それは目の前の問題を解決することだ。

 逆に弱い組織ほど、トラブルを後ろ向きに捉え、見えないように隠したり、誰かのせいにしたりする傾向が強い。トラブルが「起きたこと」が問題なのではない。「解決しないこと」の方が問題であることを経営層の方々は、しっかり心にとどめていただきたい。

 次に紹介するケースも、トラブルを放置していたために、患者の傍若無人な行為がさらにエスカレートして、手をつけられなくなってしまった例だ。

著者プロフィール

尾内康彦(大阪府保険医協会事務局参与)●おのうち・やすひこ氏。大阪外国語大学卒。1979年大阪府保険医協会に入局。年400件以上の医療機関トラブルの相談に乗り、「なにわのトラブルバスター」の異名を持つ。著書に『患者トラブルを解決する「技術」』(日経BP)がある。

連載の紹介

なにわのトラブルバスターの「患者トラブル解決術」
病医院を構えている限り、いつどんな患者がやって来るかわかりません。いったん患者トラブルが発生し、解決に手間取ると、対応する職員の疲弊、患者の減少という悪循環を招き、経営の土台が揺らぎかねません。筆者が相談に乗った事例を紹介しながら、患者トラブル解決の「真髄」に迫ります。
著者の最新刊『続・患者トラブルを解決する「技術」』好評販売中

 ますます高度化、複雑化する患者トラブルに、医療機関はどう対峙していけばいいのか。ご好評をいただいた前著『患者トラブルを解決する「技術」』の続編として、解決難易度の高い患者トラブルの対処法を体系的にまとめました。前著が基礎編、本書が応用編の位置づけですが、本書だけでも基本が押さえられるように構成しています。(尾内康彦著、日経BP社、2052円税込)

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