トランプ大統領。英国のEU離脱の驚愕が冷めやらぬ中の就任となった。
世界中の賢者が、トランプ氏の米国大統領就任を“珍事”とし、珍事が起こった理由を必死に探しつつ、これからの対応に血眼になっている――。私自身も、トランプ氏の勝因を自分なりに分析してみた。
その1。分かりやすく話す(例えハッタリでも……)
トランプ氏の演説、まるでムチャクチャな内容であるにもかかわらず、メッセージは明確で分かりやすい。「メキシコとの間に壁を作る」など、酒場のオヤジ談義なみの荒っぽいセリフだが、とにかくスパッと単純化して話している。どんなに正確な正論であっても相手に通じなければ意味を持たない。分かりやすく話すことは、患者から信頼を得る上でも大切だ。
その2。対立構造を使いこなす
話を分かりやすくするためには、対立構造を利用するのが効果的だ。すなわち、「敵を作る」。「敵は◆教だ。だから◆教徒は入国させない」「米国の利益にならないなら、TPPは敵」などなど。そんなに敵視する必要のないものまで大げさに扱い、聴衆の心の中に「そうか!これが問題なのだ」と理解させる(誤解させる?)やり方だ。
読者諸氏も同じような経験があるのではないだろうか。例えば、カンファレンスで教授にコテンパンに論破されても自分の勉強不足を認めず、「研修医の指導に時間を取られたからこんなことになった。敵は無能な研修医だ」と考えたり、「指導医の説明が分かりにくかったからこんなことになった。敵はできの悪い指導医だ」と考える。
「自分たち以外は、みんなアホだ。だからうまくいかない。アホを一掃しろ!」みたいな言い方は非常にウケるのだ(それが良いとか悪いとかの判断は別問題として置いておく)。
これらの2つのポイント「分かりやすさ」と「敵を作る」という、トランプ氏の戦略は、皮膚科外来という“戦場”でも活用できる実践的で重要な戦略とも考えられる(そんなこと言ったらヒンシュクを買うかもしれないけど…)。
以下の臨床所見の診断を進めながら、その理由を説明したい。
症例1 47歳男性。主訴は頭部から額にかけての落屑と紅斑。掻痒感はごく軽度で、本人は「フケを何とかしてほしい」と訴えて来院した。
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著者プロフィール
中村健一(ドクターケンクリニック院長)●なかむら けんいち氏。信州大医学部卒。宇治徳洲会病院、北里大皮膚科、聖路加国際病院皮膚科を経て、1993年におゆみの皮フ科医院を開業。2018年に移転、医院名を変更。著書に『診療所で診る皮膚疾患』『診療所で診る子どもの皮膚疾患』(いずれも日本医事新報社)など。

連載の紹介
【臨床講座】ドキュメント皮膚科外来
患者はヒタイに病名を書いて来院するわけではない。検査結果を待ってじっくり診断する余裕もない。立ち合い勝負の無慈悲な診療科—それが皮膚科である。教科書に載っていない、皮膚科診療における思考過程を再現してみよう。
本連載が書籍になりました!
『一般内科医が知っておきたい皮膚科の話』
『一般内科医が知っておきたい皮膚科の話』
皮膚疾患を診たい、診ざるを得ない非専門医向けに、身近な皮膚疾患について解説する書籍です。患者数が多く、かつ診断に迷うことが多いものの、皮膚科の教科書にはあまり記載がない疾患を中心に、豊富な症例写真を掲載しつつ、診断に至るまでの皮膚科専門医の思考経路を共有します。さらに、患者満足度を挙げるために押さえておきたいコツも紹介します。
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