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【第18回】外傷・熱傷の処置、どうしていますか
ラッパー派? それともドレッサー派?
衝撃本『まるわかり創傷治療のキホン』の読み方

2015/01/08

 外傷熱傷の処置としては、「消毒し乾燥させ、ガーゼ保護」という治療が古くから行われてきた。なんせ30年ほど前まではこれが常識だった。

 でも早くから「キズは乾燥させた方が良いか、湿潤させた方が良いか」を調べたエライ学者がいたのだ。50年くらい前にWinterという方が、動物実験で確認し、Nature誌に報告している1)。その結果は「湿潤した方がキズは早く治る」というものだった。

 しかし昔からの常識は、なかなか突き崩すことはできず、そのようなエビデンスがあったにもかかわらず、「キズは乾かせ」が長年支配的であった。それが最近覆ったのは、「褥瘡は乾燥させると治らない。ジクジクさせると治りが良い」という現場からの声が大きくなったからだ。

 昔々、褥瘡はどこの現場でも、イソジンべったり付けて、本当に効果があるのかないのか不明なあやしげな抗菌薬軟膏(だいたいゲンタシン軟膏)を薄く伸ばし、ガーゼ保護していた。当然、治らない。患者が感染症で死ぬ。これはえらいこっちゃ! どうにかしないといけないということで、日本の医師・看護師らが頑張って確立したのが、「湿潤療法の再認識」であった。その後、この分野は褥瘡学会として独立し、年1回の学術集会はいまや大繁盛のイベントとなっている。

 実は私自身、開業してすぐ、毎日消毒してガーゼ交換する患者よりも、湿らせておくだけで、大した処置をしていない患者の方がキズの治りが良いことにびっくりした経験がある。

 「消毒と乾燥は処置の時に激痛がするんです。だから通院を止めました。毎日お風呂に入って、キズ口をゆっくりと浸して、軟膏ペタンと、たまに付けて、まぁ、ほとんど何もしませんでしたけど、そっと覆っていましたら、治りました」と患者に言われた時は、「皮膚科医は無力だ。患者は自分で治す方法を自然と探るものだ」と感心した2)

連載の紹介

【臨床講座】ドキュメント皮膚科外来
患者はヒタイに病名を書いて来院するわけではない。検査結果を待ってじっくり診断する余裕もない。立ち合い勝負の無慈悲な診療科—それが皮膚科である。教科書に載っていない、皮膚科診療における思考過程を再現してみよう。

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