研修医時代から、不思議に思うことがあった。皮膚科の本には 伝染性軟属腫(みずいぼ)をピンセットで除去すると書いてある。しかし、「どういうふうに取るか」は一言も記載がない。ただつまんで取る?そうかな?当時(今でも)、軟属腫除去で断末魔の叫びを挙げる小児で皮膚科外来はあふれていた(大げさかな?)。
北里大学病院で先輩に聞いてみると、「それならA先生がうまいよ。患児は痛がらないらしい」という答えが返ってきた。
ゲゲゲ、それは殊勝な!当時、北里大学皮膚科学教室は教授の西山茂雄氏(現名誉教授)の元、意見交換が活発で、質問すれば誰かが答えてくれるという、たいへんありがたい気風があった。早速、A先生の診察を見学してみると、確かに子どもは痛がっていない。しかし、手の動きがとてつもなく速く、除去の瞬間が見えない。
いったいどういうことか?私は悩んだ。これは大変なことだ。神業だ。そう思いながら寝ると、こんな夢を見た。
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著者プロフィール
中村健一(ドクターケンクリニック院長)●なかむら けんいち氏。信州大医学部卒。宇治徳洲会病院、北里大皮膚科、聖路加国際病院皮膚科を経て、1993年におゆみの皮フ科医院を開業。2018年に移転、医院名を変更。著書に『診療所で診る皮膚疾患』『診療所で診る子どもの皮膚疾患』(いずれも日本医事新報社)など。

連載の紹介
【臨床講座】ドキュメント皮膚科外来
患者はヒタイに病名を書いて来院するわけではない。検査結果を待ってじっくり診断する余裕もない。立ち合い勝負の無慈悲な診療科—それが皮膚科である。教科書に載っていない、皮膚科診療における思考過程を再現してみよう。
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