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【第15回】決定的な治療法なき伝染性軟属腫
みずいぼ、どう対応してる?

2014/07/01

(イラスト:HARU)

信長医師:人間に逆らうものは、このワシが許さん! 軟属腫ウイルスは皆殺しにしてしまえ!根こそぎ除去し、根絶やしにせよ。痛がる患児は怒鳴りつけて制圧すればよろしい。医師の腕力のみが問題の解決になろうぞ!

秀吉医師:信長様。お待ちくだされ!いきなり根絶やしでは人間の側も苦痛甚大なり。ここは疼痛なく、いかに軟属腫を退治できるか、知恵を絞り、患者・医師とも満足のいく方策を練ることが肝要と心得まする。

家康医師:上様、ここはお考えくだされ。恐れながら、いずれは消滅する定めにある軟属腫でござる。やがて消えゆくものに、いたずらに労力を割くは、いかにも徒労。戦わずして勝利するは兵法の常道。忍耐強く待つこと久しく…。それすなわち勝利は必定なり。それがし、ここは「消えるまで待とう軟属腫」の考えが良いと献言つかまつる。

 さて読者諸氏は、信長型、秀吉型、家康型、どれであろう。

 以下は、日常的に皮膚科医が行っている、伝染性軟属腫(以下「軟属腫」あるいは「みずいぼ」)の対処法である。どれがよいのだろうか? 考えてみよう。

1:取らない…家康型
2:ピンセットでむしり取る…信長型 
3:液体窒素で冷凍治療…信長型に近い
4:硝酸銀を付けて腐食させる…秀吉・信長混合型 
5:いきなりピンセットは痛いので、ペンレステープ(一般名リドカインテープ)を貼付し、1時間後にピンセットで除去…秀吉型、状況によっては信長型
6:スピール膏サリチル酸絆創膏)を貼付…秀吉型
7:ヨクイニンの内服…秀吉型
8:抗ウイルス薬(アラセナA軟膏[ビダラビン])の外用…秀吉型

◆解説
1:取らない
 軟属腫は自然消退する。その期間は半年少々である(写真1、2)。もちろん、例外もあるが半年~1年以内に消退する。だから「待つ」。

 しかし、表面にできた軟属腫は完全に無害で何も生じないかというと、実はそうではない。しばしば炎症を生じ、激しい掻破を伴う(写真3)。夏季には伝染性膿痂疹を合併することもよくある。まれではあるが、なかなか消えないで大きく成長し、線維化してしまうこともある(写真4)。多くの皮膚科医は「何もしない」という治療方針には納得していないようだ。

 ただし、一部の免疫不全患者を除き、“コト”が生じても、早急に対処すれば後遺症を残さないで治癒することが多い。軟属腫は基本的に良性疾患であることと、放置した場合に頻度は少ないが生じ得る合併症について、きちんと保護者に説明し「何かあったらすぐ来院」という合意を得られれば、それはそれで構わないであろう。筆者の経験では、多くの軟属腫は無害で自然治癒している。

連載の紹介

【臨床講座】ドキュメント皮膚科外来
患者はヒタイに病名を書いて来院するわけではない。検査結果を待ってじっくり診断する余裕もない。立ち合い勝負の無慈悲な診療科—それが皮膚科である。教科書に載っていない、皮膚科診療における思考過程を再現してみよう。

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