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最難関の新「造血器腫瘍ガイドライン」をモノにせよ

2019/08/22
長門 直(中国中央病院 内科部長)

 中国中央病院の長門直です。今回は残りの6領域について、2018~2019年のアップデートと総合内科専門医試験でよく出題されるポイントについて述べていきたいと思います。

【消化器(消化管)】
 消化管領域では、「潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針(平成30年度改訂版)」が2019年3月に発表となっています。

 治療に関する改訂が行われており、1)クローン病患者に対する抗TNF-α製剤と経腸栄養療法の併用は抗TNF-α製剤の二次無効を有意に低下させ、寛解導入および寛解維持に優れている、2)劇症型潰瘍性大腸炎の治療としてインフリキシマブ点滴静注を推奨する、といった内容が記載されています。

 トファシチニブ、ベドリズマブが、成人の中等度から重度の難治性潰瘍性大腸炎の適応で2018年に承認されたことも押さえておくべきポイントです。

 「潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針」は、毎年3月に「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」班によって改訂されていますので、確認しておくとよいでしょう。

 指定難病の特定医療費受給者証所持者数の1位が潰瘍性大腸炎、4位がクローン病といったことも覚えておくとよいかもしれません(2017年末現在受給者証所持者数89万2445人のうち、1位;潰瘍性大腸炎12万8734人、2位;パーキンソン病12万7536人、3位;全身性エリテマトーデス 6万0446人、4位;クローン病 4万1068人、5位;後縦靱帯骨化症 3万2340人)。なお、この数字は患者数ではないので、注意してください。

 慢性便秘症治療薬に関しては、上市や適応拡大で使用できる薬剤が増えています。臨床で処方する機会も多い便秘症治療薬ですが、緩下剤・刺激性下剤が漫然と処方されている印象があります。治療の選択肢が増えているので、各便秘症治療薬の作用・適応・推奨度などを押さえ、使い分けができるようにしましょう。とりわけ、処方機会の多い刺激性下剤は長期連用により耐性現象・依存性を起こす可能性が報告されており、ガイドラインでも短期間投与・レスキュー薬としての投与が推奨されていることは覚えておく必要があります。

 慢性便秘については、2017年に「慢性便秘症診療ガイドライン」が作成され、日本内科学会雑誌の2019年1月号で特集が組まれていることもあり、今年出題される可能性は高いと考えています。

 ほかに、好酸球性消化管疾患の診断基準と治療(ステロイドを使用すること)、ニボルマブが治癒切除不能な進行・再発の胃癌に対して2018年に承認されたことも出題される可能性があります。確認しておきましょう。

【消化器(肝胆膵)】
 肝胆膵領域では「B型肝炎治療ガイドライン」が2019年3月にマイナー改訂、「C型肝炎治療ガイドライン」が2019年6月にメジャー改訂されています。B型肝炎の方では免疫抑制・化学療法・HCV治療によるHBV再活性化が追加記載されており、C型肝炎の方ではDAAs(直接作用型抗ウイルス薬)の承認または販売中止に伴う治療推奨の変更と、DAAs 治療によってIFN 治療と同程度の発癌抑制効果が得られることが記載されています。

 ソホスブビル・ベルパタスビル配合剤がC型非代償性肝硬変に対して2019年1月に承認されたことも、この領域のトピックの1つです。

 また、「急性胆管炎・胆嚢炎の診療ガイドライン」が2018年に改訂となり、治療アルゴリズムが変更になっています。軽症の急性胆嚢炎では患者の併存疾患や全身状態を踏まえて保存治療か早期腹腔鏡下胆嚢摘出術を検討します。急性胆管炎は、中等症で総胆管結石によるものは軽症例同様に胆管ドレナージと同時に成因(結石)に対する治療を検討することになりました。前ガイドラインでは軽症例のみの適応でしたが、変更になっています。

 膵嚢胞性腫瘍に関する出題も多く、画像検査所見から診断、特徴や治療方針といった連問のパターンをとることが多いようです。

 ほかにも、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性胆管炎、原発性硬化性胆管炎に関して、特徴と治療について出題されることが多いですので、各疾患について十分理解しておく必要があります。

【神経】
 神経領域のアップデートですが、2018年に「パーキンソン病診療ガイドライン」が改訂され、「脊髄小脳変性症(SCD)・多系統萎縮症(MSA)診療ガイドライン」が発表されました。

 改訂パーキンソン病診療ガイドラインでは、パーキンソニズムの診断は2015年MDS基準を使用すると記載され、運動緩慢に加えて、静止時振戦か筋強剛のどちらか1つまたは両方を認めるものをパーキンソン病と診断することとしました。姿勢保持反射障害を診断基準から外したことは大きなトピックと言えます。また、使用可能な薬剤が増えたことを背景に、運動症状/非運動症状の治療に関して症状別に詳しく記載されたのも特徴です。

 パーキンソン病は、原則として、診断後できるだけ早期に治療開始し、運動合併症リスクが高い場合以外はL-ドパで開始することも記載されています。

 SCDとMSAに関しては、MSAの方が総合内科専門医試験では多く出題されています。

 MSAについて、(1)本邦はMSA-C(小脳失調優位多系統萎縮症)が多いこと、(2)123I-MIBG心筋シンチグラフィが診断に有効であり、パーキンソン病やレビー小体型認知症と比べて心縦隔比(H/M比)低下を認めないこと、(3)MSA-P(パーキンソニズム優位多系統萎縮症)はパーキンソン病より抗パーキンソン病薬の有効性は低い、といったことを押さえておきましょう。

 神経領域のもう1つの大きなトピックとして、「静注血栓溶解(rt-PA)療法適正治療指針」の改訂があります。2019年3月に第3版が発行され、適応を含めて治療指針が変更されています。特に重要なのは、以下の3点です。(1)発症時刻が不明な時は、頭部MRIの画像所見を用いて、おおよその発症時刻を推定した上で治療を検討すること、 (2)「3カ月以内の心筋梗塞」が慎重投与対象から削除されたこと、(3)遠隔脳卒中診療を使用した治療が可能となったこと。

 神経領域ではほかには、延髄外側症候群(ワレンベルク症候群)、認知症(とりわけレビー小体型認知症)の特徴と治療、多発性硬化症(MS)と視神経脊髄炎(NMO)の各診断基準と治療、抗NMDA受容体抗体脳炎、片頭痛と群発頭痛の治療薬が最近よく出題されています。また、医師国家試験レベルの神経解剖もよく出題されますが、正答率が低いようです。しっかり復習しておきましょう。

著者プロフィール

長門 直(中国中央病院 内科部長)●ながと ただし。1995年九州大学卒業。総合内科/内科救急と感染症診療を中心に各地基幹病院で臨床研鑽を積み、聖マリア病院 総合診療科診療部長を経て、2018年4月 より現職。 過去の専門医試験問題を綿密に分析。受験者向けの講義、番組などで使用する予想問題は高い的中率を誇る。

連載の紹介

総合内科専門医試験 「一発合格」への道
第一線の臨床医でありながら、総合内科専門医試験、認定内科医試験の対策を独自に研究してきた長門氏。臨床医学チャンネルCareNeTVの「総合内科専門医試験 MUST」は、的確な予想問題で大好評を博した。自身の合格体験も踏まえ、万全の試験対策を伝授する。
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