
どのように説明をすればよかったのでしょう。読者の皆さんも、少し考えながら読み進めてください。
前回取り上げたように、喘息の特徴は繰り返す症状とon-off(変動性)です。良くなったり悪くなったりしながら、激しい咳や喘鳴症状を繰り返す病歴を確認したら、まず喘息を鑑別に挙げるべきです。ICS/LABA(効果の発現が速やかな吸入ステロイド[ICS]と長時間作用性β2刺激薬[LABA]の合剤)を投与して、明らかな効果が見られれば喘息と確定診断してよいでしょう。
最近の傾向として、中高年で初発する喘息患者さん、特に咳症状がメーンの「咳喘息」の患者さんが増えている印象を受けます。初発の喘息ということは、つまり咳症状が初めて生じたということ。当然、その時点でいくら「繰り返し」というキーワードを問診で聞き出そうとしても、聞けるはずがありません。
こうした患者さんについても、喘息を積極的に疑うべきなのでしょうか。実は、これはなかなか難しい問題です。
基本的に喘息は早期発見し、早期に治療を開始するほうが予後が良いとされています(START試験)1)。また、咳喘息においてもICSが効果的で、早期から使用すると気管支喘息への移行を防ぐ、というデータも示されています2)。
これらの研究結果を踏まえると、咳喘息、気管支喘息の可能性ありと考えられる症例にはまず、ICSを積極的に使用して慢性化を防ぎたいところです。
ですが、「長く続く咳」「激しい咳で、夜も眠れない」といった症状を初めて訴える症例で、胸部X線写真では異常が見られないからといって、必ずしも喘息(咳喘息)と決めつけるわけにはいきません。むしろ喘息以外の疾患である可能性が高いからです。
特に注目すべきは活動性の感染症、その中でも気管支結核は必ず除外する必要があります。
まれではありますが、実際に咳症状がなかなか治らない患者さんが気管支結核だった、という例も報告されています。喘息のように呼吸器症状に変動性はあまりなく、その他の感染症による細気管支炎のように自然軽快する要素もないのですが、「長引く咳」というキーワードだけではときに鑑別が困難なこともあるのです。長引く咳症状では、常に結核の鑑別を頭に入れながら、診断・治療を進めなければなりません。