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第36回
まぜるな危険-肥大型心筋症と心房細動

2019/12/02
村川 裕二(帝京大学溝口病院)

 秋晴れの日に豊島区のアパートのベランダで
 洗濯するのは楽しかった。
 でも、お風呂の掃除は好きじゃない……。
 ところで、洗剤には2つのタイプ。
 「塩素系」と「酸性タイプ」。
 <酸性タイプ+塩素系のカビ取り漂白剤>は「まぜるな危険!」。
 どくろマークの塩素ガスが発生します。
 それはそれとして……。
 「心臓病診療で危険な組み合わせ」ってなんだろう?
 なんてことを考えていたら、「肥大型心筋症+心房細動」を思いつきました。

肥大型心筋症の心房細動はスペシャルか?

 困った状況です。
 肥大型心筋症の心房細動では
 心不全になる。
 心原性脳塞栓症が生じる。
 ……「リスク割り増し」のスペシャルな病態です。

ニワトリが先

 普通は「肥大型心筋症が先」で、「後から心房細動」。
 「左室がしなやかに拡張できない→左房血を引っ張れない→左房負荷→心房細動」が素直な説明。
 一方、
 「肥大型心筋症→左室流出路閉塞→僧帽弁前尖が閉まらない→僧帽弁閉鎖不全→心房細動」ということもあります。
 機械的メカニズムとは別に……
 心房筋変性とかカルシウムイオンの挙動によるという説もあります。

何が肥大型心筋症か

 左室の厚さが「どこでもいいから15mm以上」が基本。
 ほどほどの肥厚で「高血圧」とか「大動脈弁狭窄」があれば、肥大型心筋症の診断はつけにくい。
 高血圧、弁膜症、あるいはアミロイドースとかの左室肥大は全周性の均一な肥厚です。
 陶芸のろくろで、きちんと作った厚手の壺は二次性(下図)。
 それに比べて、“ホンマモン”の肥大型心筋症は、しばしば中隔肥大が目立ちます。
 下手なのか、名人なのかはともあれ、「いびつ感」のある壺。

著者プロフィール

村川裕二(帝京大学附属溝口病院第四内科・中央検査部教授)●むらかわゆうじ氏。1981年東京大学卒。83年同大第二内科入局。89年関東中央病院内科、91年東京大第二内科助手を経て2003年帝京大附属溝口病院第四内科助教授。04年同教授。16年中央検査部教授を兼務。

連載の紹介

村川裕二の「ほろよいの循環器病学」
某医学雑誌で10年以上、循環器病学の連載を続けてきた筆者の名コラムが、場所を移して“新装開店”。堅い話になりがちな最新医学の話題をゆるゆる、まったり解説。穏やかな語り口に引き込まれながら、読みふけってしまう。肩肘はらず、グラスを傾けながら、たそがれ時のお供に。イラストも筆者のオリジナル。

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