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第34回
一人焼き肉・一人カラオケ時代の強心薬-ピモベンダンの話

2019/10/01
村川 裕二(帝京大学溝口病院)

 クリぼっち……。
 「クリスマスに独りぼっち」の意味でした。
 研修医の頃からクリスマスイブは当直のバイト。
 あれは、「クリぼっち」だったのか。
 「一人焼き肉、一人カラオケ」が流行るこの頃。
 今回は、独りぼっちの経口強心薬ピモベンダンのお話です。

20世紀の経口強心薬

 1980年頃……。
 新しい心不全治療薬が待たれました。
 臨床試験を行うと……。
●β1刺激薬のキサモテロール。
 重症心不全患者の4週以内の死亡率は……。
 プラセボ群3.7% vs. キサモテロール群9.1%(Lancet 1990)。
●経口ホスホジエステラーゼ(PDE)III阻害薬のミルリノン。
 全死亡率は28%も増加したし、
 心血管死も34%増えました(PROMISE試験: N Engl J Med. 1991)。
●もうひとつの経口PDEIII阻害薬のベスナリノン
 1990年に発売開始されたけど、
 死亡率が増えました(VesT試験: N Engl J Med 1998)。
 無顆粒球症や、話せば長い不都合もあって、2010年に消えました。
 つまり、「いいね!」をクリックしてもらえるほどの強心薬のスターは見つかりませんでした。
 パワフルな経口強心薬は幻になりました。

なぜ経口強心薬は難しい

 「強心薬→不整脈が増える→予後悪化」という説明もあります。
 <心筋細胞の筋小胞体がCa2+を出し入れするシステムの不具合を修復する>のは難問です。
 強心薬は、「暑い夏に走る」治療。
 無理がある→長持ちしない。
 β遮断薬やレニン・アンジオテンシン系(RAS)阻害薬で「のんびりとリズムを守る」ほうが、慢性心不全には向いています。
 分子生物学的情報はいっぱいあるけど、なにが核心なのか?
 歯が立たないので、ここはパス。

暴風雨の中で

ところが……。
PDEIII阻害薬のピモベンダンだけはボチボチ使われています。
1978年にドイツで合成(下図)。

著者プロフィール

村川裕二(帝京大学附属溝口病院第四内科・中央検査部教授)●むらかわゆうじ氏。1981年東京大学卒。83年同大第二内科入局。89年関東中央病院内科、91年東京大第二内科助手を経て2003年帝京大附属溝口病院第四内科助教授。04年同教授。16年中央検査部教授を兼務。20年から客員教授。

連載の紹介

村川裕二の「ほろよいの循環器病学」
某医学雑誌で10年以上、循環器病学の連載を続けてきた筆者の名コラムが、場所を移して“新装開店”。堅い話になりがちな最新医学の話題をゆるゆる、まったり解説。穏やかな語り口に引き込まれながら、読みふけってしまう。肩肘はらず、グラスを傾けながら、たそがれ時のお供に。イラストも筆者のオリジナル。

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