日経メディカルのロゴ画像

第24回
お、値段以上?─ ニトロ

2018/11/01
村川 裕二(帝京大学溝口病院)

 家から30m先に幼稚園。
 運動会があれば、アンパンマン、ドラえもん、ディズニーの曲が流れます。
 最近はAKBやアムロ。
 だけど、『となりのトトロ』はゼッタイ外せない。
 トトロとくれば、循環器医なら誰もが思い出すニトロ。
 そんなわけで、今回は硝酸薬のお話。

ニトロの誤解

 処方する人も調剤する人も、半分は「ニトロは冠動脈狭窄を開く」と思っています。
 これは誤解。
 ニトロの主なターゲットは静脈。
 「静脈に血管内ボリュームを引き取る→心臓の仕事が減って→心筋虚血の緩和」が、抗狭心効果の主な理由です。

作れるか?

 Yahoo!知恵袋に……
 「ニトログリセリンは作れますか?」
 という質問がありました。
 何を目指している人なりや。
 「濃硝酸と濃硫酸を1:3に混ぜたものにグリセリンを冷やしながら加えればできますよ」がベストアンサー。
 生物系研究室なら手に入りそうなものばかり。
 どこまで無事でいられるのか知りません。

薬としてのニトロ

 爆発するニトロと実体は同じ。
 19世紀末には狭心症の治療に使われました。
 やがて、一硝酸イソソルビドや二硝酸イソソルビドなども開発され、まとめて硝酸薬といいます。
 日本では1953年にニトログリセリン舌下錠が発売開始。
 空気に触れると徐々に効かなくなりました。
 そこで88年から、口腔内で溶けやすく、失活しにくいニトロペン舌下錠0.3mgが使われています。

なぜなめる

 ニトログリセリンを飲む→消化管で吸収→肝臓で壊される→効かない。
 だから、ニトログリセリンは「飲んだらいけない」らしいです。
 ニトログリセリン以外の硝酸薬では、この問題はありません。

なぜ血管が開くのか

 硝酸薬は血管拡張の大スター、<一酸化窒素・エヌオー>を産生します。
 「NO ENTRY」「NO SMOKING」「NOと言える日本」。
 “NO”はよく目にします。
 平滑筋の研究者は、「NO」の文字を見ると興奮します。
 内皮で作られたNOも硝酸薬のNOも、複数の経路で<細胞内Ca2+濃度低下→血管拡張>を促します。
なかでも大事なのは、「サイクリックGMP合成を亢進」させること(下図)。

著者プロフィール

村川裕二(帝京大学附属溝口病院第四内科・中央検査部教授)●むらかわゆうじ氏。1981年東京大学卒。83年同大第二内科入局。89年関東中央病院内科、91年東京大第二内科助手を経て2003年帝京大附属溝口病院第四内科助教授。04年同教授。16年中央検査部教授を兼務。20年から客員教授。

連載の紹介

村川裕二の「ほろよいの循環器病学」
某医学雑誌で10年以上、循環器病学の連載を続けてきた筆者の名コラムが、場所を移して“新装開店”。堅い話になりがちな最新医学の話題をゆるゆる、まったり解説。穏やかな語り口に引き込まれながら、読みふけってしまう。肩肘はらず、グラスを傾けながら、たそがれ時のお供に。イラストも筆者のオリジナル。

この記事を読んでいる人におすすめ