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第22回
心マで通電効率上がる? ─ 電気ショックの話

2018/09/03
村川 裕二=帝京大学溝口病院

 新宿で買い物をしていた夕方。
 隣の婦人がレジに出したクレジットカード……。
 赤地に白の「DC」2文字。
 DCカードなら三菱UFJニコス。
 しかし、頭に浮かんだのは 
 “direct current” 
 これは直流でDC。交流がAC(alternating current)。
 そんなわけで今回は、直流ショックのお話。

直流通電はなんに使うか

 心室細動(ventricular fibrillation:VF)を止めます。
 細動を止めるから除細動(defibrillation)。
 心室の頻拍も、心房の頻拍も、くるくる回っている頻拍は何でも停止できます。
 VF以外への通電はカルディオバージョン(cardioversion)と言います。

いつから始まったか

 1898年に動物での除細動がスイスから報告されています(Geddes LA, Med Prog Technol 1976;4:27-30.)。
 1930年代にアメリカから交流電流での除細動も報告されています。
 ホントに交流で除細動できるか不思議。
 1947年にヒトでDC除細動に成功しています。
 1960年代から、広く世界で使われるようになりました。

どうしてVFが停止するか

 一番直感的な仮説は「VFの興奮をぶっ飛ばす→スッキリする→除細動成功」というタイプです。
 「冠動脈にKCl注入して<部分的に心室興奮を消失させる>とVFは維持できない」という実験や、心室を小さくカットするとVFが止まったという観察があるらしいです。
 「心室全部でなく、大半の電気活動を消すだけで除細動できる」という説が出てきました。
 critical mass仮説と言います。
 しかし、実験的に「通電直後にほんの短い間に電気現象を認めないのにVFが再開する」ことが観察されています。
 1、3、6歳の3人息子が2DKを走り回っている(冒頭のイラスト)。
 洗濯物をたたんでいるお母さんが「ウルサーイ」と100dBで怒鳴る。
 シーンとなる→5秒たつ→またキッズが走り出す。
 こんな感じで、電気ショックがVFを「ぶっ飛ばす」だけでは不十分だと分かりました。

必要なエネルギー

 ならば、必要な通電エネルギーとは?
 「そこにあるVFをぶっ飛ばすエネルギー量 < 次のVFを引き起こすエネルギー量 < 次のVFを引き起こさないエネルギー量」という関係があります。
 つまり「次のVFを引き起こさないエネルギー=必要なエネルギー」というコンセプトです。
 コアになる論文は1986年に発表されました。
 さらに、マッピングやコンピューター・シミュレーションによる詳細な基礎研究があります。
 しかし、21世紀になってからは難解でついていけないので省略。
 

著者プロフィール

村川裕二(帝京大学附属溝口病院第四内科・中央検査部教授)●むらかわゆうじ氏。1981年東京大学卒。83年同大第二内科入局。89年関東中央病院内科、91年東京大第二内科助手を経て2003年帝京大附属溝口病院第四内科助教授。04年同教授。16年中央検査部教授を兼務。

連載の紹介

村川裕二の「ほろよいの循環器病学」
某医学雑誌で10年以上、循環器病学の連載を続けてきた筆者の名コラムが、場所を移して“新装開店”。堅い話になりがちな最新医学の話題をゆるゆる、まったり解説。穏やかな語り口に引き込まれながら、読みふけってしまう。肩肘はらず、グラスを傾けながら、たそがれ時のお供に。イラストも筆者のオリジナル。

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