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第14回
ワルファリン ─ あなたがいたから僕がいた

2018/01/04
村川 裕二(帝京大学溝口病院)

 郷ひろみ、好きだなあ。世代は同じだし、カラオケで歌った。
 「哀愁のカサブランカ」、100回はマイク握った。
 「あなたがいたから僕がいた」は、1976年のリリース。
 この曲がどうこういう話じゃないけど、<心房細動脳梗塞予防>とくれば──
 「ワルファリンがいたからダビガトランエドキサバンがいるのだ」
 ……という流れで、ワルファリンの話をちょっとばかり。

あっちとこっち

 ワルファリンは、心原性脳塞栓症に「たったひとり」で立ち向かいました。
 ほぼ40年。定年もそろそろの勤務年数。
 アスピリンも、「おいらも戦友」という顔をしていました。
 しかし、21世紀になる頃に、<あんたはあっちで仕事。こっちはいいから>という邪険な扱いをされるようになりました。
 <あっち>は冠動脈疾患の方で、<こっち>は心原性脳塞栓症のことです。

「ワルファリン適正使用情報」は危険

 もともとエーザイが、ワルファリンを販売。薬剤の使い方の啓発も一手に担いました。
 多大な貢献。本社ビルがある東京・文京区小石川にとってはホントに誇りです。
 ジェネリックが多くなったけど、エーザイのウェブサイトの「Warfarin適正使用情報」はずっと改訂が続けられています。
 詳細にワルファリンの使い方が書かれています。
 どこが危険か→ページ数が多過ぎる。計661ページ。
 最初のページに……
 <ページ数が多いため、印刷にはご注意ください>
 と書いてあります。
 うっかり印刷を始めて、パニックに陥った犠牲者は毎年10人(冒頭イラスト)。
 キャノンのインクジェットプリンターだと、紙代よりインク代で泣ける。
 ごく最近の「Fushimi AF Registry」のデータも載っています。
 最新版は、2017年8月更新。

なぜPT-INRなのか

 ワルファリンの凝固抑制効果は、PT-INR(プロトロンビン時間国際標準比)で測定。
 なぜ、APTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)でないのか?
 この数年、抗凝固薬についてしゃべる用事もあって、「なぜ」を解決しておかねばならなくなりました。

著者プロフィール

村川裕二(帝京大学附属溝口病院第四内科・中央検査部教授)●むらかわゆうじ氏。1981年東京大学卒。83年同大第二内科入局。89年関東中央病院内科、91年東京大第二内科助手を経て2003年帝京大附属溝口病院第四内科助教授。04年同教授。16年中央検査部教授を兼務。

連載の紹介

村川裕二の「ほろよいの循環器病学」
某医学雑誌で10年以上、循環器病学の連載を続けてきた筆者の名コラムが、場所を移して“新装開店”。堅い話になりがちな最新医学の話題をゆるゆる、まったり解説。穏やかな語り口に引き込まれながら、読みふけってしまう。肩肘はらず、グラスを傾けながら、たそがれ時のお供に。イラストも筆者のオリジナル。

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