日経メディカルのロゴ画像

感染対策における俺たち例外主義(その2)
あるいは語り手の課題

2019/03/19
森井大一

 前回に引き続き、手指衛生と感染対策の課題を考えてみたい。今回は感染対策担当者の“語りべた問題”である。

 手指衛生遵守の課題が未だ解決されていない現状を説明し得る2つの理由のうち、筆者はとりわけ感染対策担当者の“語りべた問題”を重視したい。もちろん、自戒、自嘲、懺悔を込めてである。一つの反省点は、多様な医療者に対して、画一的な語りかけしかしてこなかったのではないか、という点である。

 一例を挙げる。

 2012年に発表されたメリーランド大学/ボルチモアVAの研究1)で、MRSAや多剤耐性アシネトバクター(MDRA)等の多剤耐性菌を保菌する患者をケアした医療者の手袋やガウンにどれぐらい同じ菌が付いているかを見たものがある。

 それによると、MRSA患者の部屋に入って出てきた医療者の手袋又はガウンに、同じMRSAが付いていた割合は14%、MDRAは33%であった(図1)。つまり、ある患者がアシネトバクターを保菌していれば、医師なり看護師が3回以上なにがしかのケアや診察をした時点で、ほぼ確実にその医療者の体のどこかにその菌が付着しているといえよう。しかも、たとえ手袋をしていたとしても、手袋の下の手には3%程度の頻度で同じ耐性菌が付着していることも明らかとなった(図1中の黄色のバー)。

(画像をクリックすると拡大します)

著者プロフィール

森井大一(もりい・だいいち)●大阪大学大学院医学系研究科博士課程。2005年3月大阪大学医学部卒業、同年4月国立病院機構呉医療センター、2010年大阪大学医学部附属病院感染制御部、2011年米Emory大学Rollins School of Public Health、2013年7月厚生労働省大臣官房国際課課長補佐、2014年4月厚生労働省医政局指導課・地域医療計画課課長補佐、2015年4月公立昭和病院感染症科を経て今に至る。2018年から阪大病院の感染制御部医員も兼務。

連載の紹介

森井大一の「医療と経済と行政の交差点」
救急医として医師のキャリアをスタートさせた後、感染制御に越境し、公衆衛生を学んだ上で、厚生官僚を経験。現在はノーベル賞受賞で話題の行動経済学を医療に応用すべく研究を進める筆者に、 医療と経済と行政が交わる地点に立って思いの丈を語っていただきます。

この記事を読んでいる人におすすめ