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第6回
一過性のしびれを伴う<めまい>急患への対応法

2018/04/06
望月礼子

研修医: めまいの診断に自信がついてきました! めまいの鑑別疾患とレッドフラッグ(第4回 主訴<めまい>の救急患者への対応法)は頭に入ったし、垂直眼振も診たし(第5回 「回転性めまい=末梢性」はNG)。

救急医M: いい感じだね。自分の脳内ファイルに、毎回症例を蓄積できるように、この調子で頑張ろう!

 そんな会話をしているところで、救急隊から病院連絡です。

救急隊: 72歳男性、主訴はめまいと頭痛です。8時発症、体動で増強し、安静で消失するめまいです。10時ごろめまいが増強し、右手のしびれと、右後頭部と肩の痛みを訴えています。バイタルサインは、意識清明、血圧176/86mmHg、脈拍60回/分・整、呼吸数18回/分、SpO2 98%(Room Air)、体温36.4℃。神経学的異常所見はありません。既往は高血圧のみです。

 ということで、搬送を受け入れました。

研修医: 体動で増強・安静で消失するめまいなら、良性発作性頭位めまい症(BPPV)ですが、しびれと頭痛・肩の痛みはBPPVでは説明がつかないですね。頭痛、しびれは中枢性めまいのレッドフラッグですね(第4回)。

救急医M: いいね。レッドフラッグをしっかり確認していこう。

<来院時所見>10:53病着
搬送中に右手指のしびれと頭痛は消失したとのこと。
ストレッチャー上半座位で落ち着いている、冷汗なし。
GCS(glasgow coma scale):15点、E4V5M6、構音障害なし。血圧186/94mmHg、脈拍59回/分・整、呼吸数18回/分、SpO2 98%(Room Air)、体温36.5℃
神経: 瞳孔3/3mm左右正円同大 対光反射+/+、脳神経II-XII局所所見なし、注視でも垂直眼振認めず、指鼻試験・膝踵試験・回内/回外試験は陰性
頭頸部/心音/呼吸音/腹部: 特記なし
四肢: 上下肢 左右MMT5、しびれなし

研修医:  頭位変換テストで、潜時8秒、持続時間60秒で完全消失するめまいです。めまいもしびれも消失しているので、BPPVでいいと思います。

救急医M: でも、頭痛としびれが一過性にあったのだから、BPPVだけでは説明がつかないね。一過性の症状も含めて、鑑別しないといけないね。

救急医Mの思考: 今、症状がないなら脳出血ではないはずだ。頭部CTは不要か。脳MRI検査は必要だな……。

看護師: 先生、右1-3指の指先のしびれと、右首から肩にかけての痛みがあったそうですよ!(心の声:画像検査のオーダーまだかしら……)

研修医: しまった! 病着時に症状がなかったので、頸部痛やしびれについて聴取していませんでした。

救急医M: 「右の首から肩にかけての痛み」。そうか、頸部痛か! それなら椎骨動脈解離からの小脳梗塞の可能性が高い!

著者プロフィール

望月礼子(鹿児島大学救命救急センター・奄美プロジェクト特任講師)●もちづきれいこ氏。2007年大分大卒。自治医科大学附属病院の初期研修で臨床推論の奥深さに触れ、疾患の宝庫である救急へ。今後の夢は、緊急度・重症度の評価で重要な「レッドフラッグ」を救急隊や離島医療、一般市民に広めること。南極で皇帝ペンギンと語り合うこと。救急科専門医。

連載の紹介

患者到着前から始まるエマージェンシー臨床推論
時間との闘いである救急医療は患者到着前、すなわち救急隊からの病院連絡時から始まる。救急隊の情報を基に原因疾患を臨床推論し、患者到着と同時に適切な対応を提供する--。この目標を達成するために必要となる「救急ならではの思考プロセス」を、救急医の望月氏が独自作成した「二次元鑑別リスト」で見える化する。

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