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第3回
主訴<腰痛>での発熱と安静時持続痛の診かた

2018/02/16
望月礼子

 皆さん、こんにちは!この連載は、救急での臨床推論を症例から味わう形式になっています。救急の臨床推論は他科の臨床推論と何が違うのでしょうか?

 救急は教育ポイントがざっくざく、宝の山ほどありますが、短時間で診断治療にたどり着く必要があり、初療室で初期研修医達とゆっくり話しながら診療することは難しく、教育担当者としてジレンマがありました。そこで救急医の思考過程をひも解きながら、言語化・視覚化した教育ツールとして二次元鑑別リストを作るに至りました。(二次元鑑別リスト詳細は過去の連載「主訴<腰痛>での救急搬送で見逃せない疾患は?」「主訴<背部痛>のレッドフラッグを極める」をご参照ください)。今回もこの二次元鑑別リストを用いて症例にアプローチします。

 早速ですが、救急隊からの病院連絡です。ちなみに季節は夏。皆さんはどんな鑑別疾患を考えますか?

救急隊:55歳男性、主訴は腰痛です。脊柱管狭窄症で近医通院中。昨日農薬噴霧で20kg程度の物を背負い作業したそうです。帰宅後、板の間で寝て、本日起床時より腰痛で体動困難のため救急要請となりました。体動時痛はあるも、歩行はなんとか可能です。収容可能でしょうか?
研修医:しびれ・麻痺はありますか? 
救急隊:ありません。

 ということで、搬送を受けました。バイタルサインは、意識清明、血圧152/131mmHg、脈拍数81回/分・整、呼吸数13回/分、SpO2 98%(RA)、体温測定中とのこと。

 この日の初療は混んでいて、この時点で3人の救急搬送患者の診察中でした。

救急医Mの頭の中:55歳男性の腰痛。麻痺・しびれがなくて、重量物作業後なら、急性腰痛症でよいだろう。早く返そう。ベッドを空けないといけない。

 到着した患者は活気あり、麻痺・しびれはなく、骨折を疑う背部叩打痛もないことを救急医は手早く確認しました。

患者:「昨日は重い噴霧器しょってさー、疲れて板の間で寝ちゃったんだよね。床が硬かったから、こんなに痛くなったんだと思う」とのこと。来院前から用意していた鎮痛坐薬(NSAIDs 50mg)を挿肛し、観察室で休んでもらいました。20分ほどして、「(病院の)ベッドが硬いんだよ! 腰痛くなっちゃうよ」などとコールがありましたが、その後坐薬の効果で歩行可能となったのを確認し、帰宅・経過観察としました。

 しかし、それだけでは終わりませんでした。

著者プロフィール

望月礼子(鹿児島大学救命救急センター・奄美プロジェクト特任講師)●もちづきれいこ氏。2007年大分大卒。自治医科大学附属病院の初期研修で臨床推論の奥深さに触れ、疾患の宝庫である救急へ。今後の夢は、緊急度・重症度の評価で重要な「レッドフラッグ」を救急隊や離島医療、一般市民に広めること。南極で皇帝ペンギンと語り合うこと。救急科専門医。

連載の紹介

患者到着前から始まるエマージェンシー臨床推論
時間との闘いである救急医療は患者到着前、すなわち救急隊からの病院連絡時から始まる。救急隊の情報を基に原因疾患を臨床推論し、患者到着と同時に適切な対応を提供する--。この目標を達成するために必要となる「救急ならではの思考プロセス」を、救急医の望月氏が独自作成した「二次元鑑別リスト」で見える化する。

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