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第1回:戦略思考のススメ 

2014/04/16

 「分割して統治せよ」──。古代ローマ帝国の支配戦略を表す言葉である。被支配者同士が連帯しないよう対立させておき、支配者が効率的に統治する手法を言う。かつて大英帝国がインドの統治にもこのメソッドを応用した。

 分割統治の構図は、今の日本の医療界にも当てはまらないだろうか。医療団体はそれぞれの範囲のミクロな利害調整に追われ、有機的に連帯して真の政策提言をするケースが少ない。そうこうするうちに統治者(ここでは財務省や厚生労働省など)が破綻寸前の財政を凌ぐための政策を投入するのだ。

まじめに働くが、政策に疎い医師たち
 結果的に、現場でまじめに働く医師にしわ寄せがいくように見える。臨床に携わる医師は忙し過ぎて、政策を知る時間がない。新聞も読む暇もないだろう(読んだとしても質の悪い記事がたくさんある)。医師の多くは黙々と日々の診療に明け暮れるのみである。

 医師という専門職集団の動き方、政策提言について見直す必要があると考えている。医療現場から疫学データやファクトを積み上げ、医師側が政策提言をし、厚生労働省はそれを政策作りに反映させ、財務省とも交渉する。こうして現場と政策がつながることが重要なのである。

 幾つか論点を挙げてみよう。例えば、いつまでも改善されない医師のワークライフバランス。医師免許を持つ者の絶対数をニーズに応じて増やしていけば、日本は財政破綻するだけである。

 効率的かつ現実的な対応策は、第一に特定看護師のキャリアパスを確立して数を確保すること、第二に将来的には特定薬剤師を新設すること。私は大阪の桜橋渡辺病院という心臓外科で有名な民間病院で開心術のトレーニングを受け、心臓外科医にしてもらったのであるが、本当に看護師が優秀であった。

 第三に即効性があるのは女性医師の労働環境の改善だ。保育園を増やし、待機児童数をゼロとすれば良いようにみえるが、熱の出た子供を預かれないようではダメだ。第四に、病院の主治医制度を見直し、シフト制を敷くこと。そうしたモデル病院が出現してもよいと思う。

 こうした対応策がスピード感を持って実行に移されない現状を歯がゆく思っている。

著者プロフィール

宮田俊男(日本医療政策機構エグゼクティブディレクター、医師)●みやたとしお氏。
1999年早大理工学部(人工心臓開発)卒、2003年阪大医学部卒。7年臨床(心臓外科)に従事した後、厚労省へ。退官後、2013年より現職。内閣官房の戦略推進補佐官、神奈川県黒岩祐治知事の顧問、国立がん研究センター政策室長なども兼務。Twitterはこちら

連載の紹介

宮田俊男の「医師こそ戦略思考を」
日本の医療政策は難しい舵取りを迫られています。国民皆保険制度を維持し質の高い医療を提供するために、どのような医療政策が必要なのでしょうか。一人ひとりの医師がマクロな視点から医療を捉え、ベストな戦略を考えることが大切です。ここでは、そのための話題を提供します。

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