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適応障害の安易な診断がNGなこれだけの理由

2021/09/09
宮岡 等(北里大学名誉教授)

 精神科救急を含む精神医療のあらゆる面を担当していた大学病院を定年退職してから、以前より関心を持っていた産業医現場での活動に軸足を移している。気になることは山のようにあるが、その一つが精神科医の出す「適応障害で休職が必要である」という診断書だ。
   
 「精神科医は職員の話だけから診断をつけているのだろうか」、「どの程度のストレスがあれば適応障害と診断されるのだろう」、「精神医学には適応障害のきちんとした診断基準があるのだろうか」、「職場環境を調整する必要があると職員に伝え、職場の実情は知らないまま、なんで『2カ月の休養を要す』なんていう診断書が書けるんだろう」などという、診断書をみた時の産業医の声が聞こえてくる。

 さらに労災関係の業務に関わっている関係で、「精神科主治医はどの程度状況を把握して診断しているのか。これで適応障害と診断したのか」と疑問を持つ労災関係者が少なくないのを目の当たりにしている。ちなみに、労災判定では、精神科医が適応障害と診断した事例に関して非常に詳細な職場状況が調査される。

著者プロフィール

宮岡等(北里大学名誉教授、東北医科薬科大学臨床教授)●みやおかひとし氏。土佐高校卒、慶應義塾大学卒。東京都済生会中央病院精神科、昭和大学精神科を経て1999年5月から2021年3月まで北里大学医学部精神科学主任教授。2015年7月から2020年3月まで北里大学東病院院長(兼務)、2017年7月から2019年6月まで神奈川県医師会理事。

連載の紹介

宮岡等の「精神科医のひとりごと」
精神疾患患者の増加に伴い、精神科診療に関わる医療従事者は今後ますます増えていきます。精神科医はもちろん、精神科以外の医療従事者にも知っておいてほしい精神医療の現状や課題を、筆者が伝えます。

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