日経メディカルのロゴ画像

自覚症状を基に診断する病態の病名告知を考える

2020/07/24
宮岡 等(北里大学医学部精神科学主任教授)

ケース1:適応障害とうつ病(産業医の立場で)
 ある企業に勤める40歳代の男性職員。通っている精神科クリニックから、「適応障害で、休養と勤務場所の変更が必要である」という診断書が出された。この職員に産業医面談を行ったところ、「主治医は『適応障害なので、勤務場所さえ変えてもらえば、復職できるはず』と説明してくれた」と言う。さらにこの職員は「確かに、今の職場は慣れなくて負担が大きい。会社は主治医の言う通りにしてほしい」と述べた。

 産業医として詳細に話を聞くと、(1)過去にうつ病エピソードを疑わせる時期があり、勤務の配慮は必要なものの、同時に適切な薬物療法も実施したほうがいい。(2)休養と薬物療法でうつ状態はある程度改善する可能性が大きい、(3)どのような配置転換が必要かは、うつ状態が少し改善してから考えてもよい──と考えられた。しかし、本人は主治医の説明も影響してか、診断書の通り職場が対応してくれないと、自分は良くならないと確信していた。

 これには逆のケースも多く、産業医としては、適応障害と考えて職場環境を変えた方がいいと考えるのに、主治医の「うつ病だから抗うつ薬で治ります」という言葉に、職員が過度に固執することもある。

著者プロフィール

宮岡等(北里大学医学部精神科学主任教授)●みやおかひとし氏。慶應義塾大学卒。東京都済生会中央病院精神科、昭和大学精神科を経て1999年から現職。2015年7月から2020年3月まで北里大学東病院院長(兼務)、2017年7月から2019年6月まで神奈川県医師会理事。2020年4月から北里大学病院長補佐を兼ねる。

連載の紹介

宮岡等の「精神科医のひとりごと」
精神疾患患者の増加に伴い、精神科診療に関わる医療従事者は今後ますます増えていきます。精神科医はもちろん、精神科以外の医療従事者にも知っておいてほしい精神医療の現状や課題を、筆者が伝えます。

この記事を読んでいる人におすすめ