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「新しい抗うつ薬」は優れているのか

2019/12/10
宮岡 等(北里大学医学部精神科学主任教授)

 製薬会社の担当者が最近発売された抗うつ薬の情報提供に来た。私が常に尋ねるのは「既に発売されている抗うつ薬よりどの点で優れているか」という質問である。

 すぐ出てくる回答は、受容体別の作用の差など薬剤の生化学的プロフィールで、これは新しく発売された抗うつ薬ではいつも聞く説明である。一方、臨床データで新たな特徴が示されることはほとんどない。「重箱の隅をつつくようなことでもいいから、何か臨床データで優れた点を示せないか」と問うと、弱ったような表情で、「強いて言えば」的に後付け解析の結果を出すが、既存薬とそれほど大きな違いが示されることはない。

 かつて薬剤を認可する側の担当者に、同種同効であっても数剤は認可されることが多いと聞かされたことがあるので、驚くべきことではない。本当のところは今回の薬剤も同種同効であり、製薬会社担当者への「既に発売されている抗うつ薬よりどの点で優れているか」は、彼らにとっては意地悪な質問なのであろう。

新しい抗うつ薬への懸念

著者プロフィール

宮岡等(北里大学医学部精神科学主任教授)●みやおかひとし氏。慶應義塾大学卒。東京都済生会中央病院精神科、昭和大学精神科を経て1999年から現職。2015年7月から2020年3月まで北里大学東病院院長(兼務)、2017年7月から2019年6月まで神奈川県医師会理事。2020年4月から北里大学病院長補佐を兼ねる。

連載の紹介

宮岡等の「精神科医のひとりごと」
精神疾患患者の増加に伴い、精神科診療に関わる医療従事者は今後ますます増えていきます。精神科医はもちろん、精神科以外の医療従事者にも知っておいてほしい精神医療の現状や課題を、筆者が伝えます。

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