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【連載第9回】
吸入ステロイド薬はいつまで続けるのか

2006/09/11

 吸入ステロイド薬喘息治療の中心的薬剤として位置付けられるようになった。しかし「吸入ステロイド薬の服用をいつまで続けるのか」という問いに対する明確な答えはないのが現状だ。実際、「喘息予防・管理ガイドライン2006」(JGL2006)にも、吸入ステロイド薬の中止についての記載はない。

 一般に、喘息は気道の慢性炎症である(詳しくは連載第4回を参照)ことから、病状が安定していても長期的に継続して使用するのが原則だが、一部には中止しても差し支えないケースもある。

中止しても悪化しない患者の特徴
 発作も症状もなく、喘息が非常に良くコントロールされていても、吸入ステロイド薬を中止すると、喘息の多くは悪化するといわれている。確かに吸入ステロイド薬は喘息を根本的に治癒させる薬ではなく、悪化する可能性は高いと考えられる。しかし現実には、中止して悪化しない患者もいる。当院の調査(成人)では、中止しても悪化していない患者が全体の17%を占めた。

 中止しても悪化しない患者の特徴は
1)軽症~中等症の一部患者
2)発病早期(2年以内)に吸入ステロイドを使用した患者
3)症状が消失しても、一定期間吸入ステロイド薬を規則的に使用していた患者
などである。

 当院では、発作がなくても何らかの症状が少しでもある患者や、ピークフロー値が低い患者には、「中止すると悪くなる可能性が高いですから、吸入ステロイド薬を続けましょう」と説明して、コントロールに必要な最小限の量で吸入ステロイド薬を継続使用するようにしている。一方、全く症状がなく、ピークフロー値も極めて良好な状態が数年間続けば、「中止して様子を見ましょう」とお話して中止することがある。ただし、こうした症例は必ずしも多くはなく、しかも、一部では再発が見られることもある。

中等症、重症での中止は困難
 当院では、重症度別にステップダウンの目標を定め、中止も視野に入れて治療に当たっている。しかし、中等症・重症の一部では、ステップダウンの目標を達成することが難しい。

 このことからも、吸入ステロイド薬の中止は、軽症では容易・可能だが、中等症では多くは困難、重症では困難と考えている(表1)。軽症と中等症の一部患者を除いて、吸入ステロイド薬はなかなか中止できないのが現状であるにもかかわらず、このことを患者に説明している医師も、またきちんと理解している患者も非常に少ない。

著者プロフィール

宮川 武彦(宮川医院院長)●みやがわ たけひこ氏。1969年東邦大卒。70年岐阜大医学部第一内科勤務。72年国立療養所岐阜病院(現国立病院機構長良病院)で喘息外来を担当。78年に岐阜市で宮川医院を開業。

連載の紹介

【臨床講座】喘息治療のツボ
過小評価しがちな喘息の診断のポイント、治療の中心となる吸入ステロイド薬とその併用薬の使い方、自己管理を成功させるための患者指導—。シンプルで効果的な喘息治療を進めるためのアドバイスをお届けします。

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