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「歯科医師ですが、ワクチン接種してもいいですか?」と言わせるつもり?

 3度目の緊急事態宣言が発令された東京都。ビルの狭間にも春が訪れ、新緑を抜ける風が心地良い。しかし、私の診療所の外来は相変わらず暇で、あまり春を実感できない。まさに「春よ 遠き春よ~」という気分だ。

 さて、品川区の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチン事情はというと、「医療従事者接種」は基本型接種施設(基本型)における接種が完了し、連携型接種施設(連携型)へのワクチンの移送が始まった。そして、またまたトラブルが起こった。

 連携型へのワクチンとシリンジは基本型を経由して移送される。基本型には、連携型用のワクチンとシリンジは別の会社が搬入する。ということで、基本型にはワクチンは届いても、シリンジの到着が遅れていた。ワクチンの申し込みはワクチン接種円滑化システム(V-SYS)で行うため、連携型は基本型にワクチンだけでなくシリンジもちゃんと届いているかを確認しない(できない)まま、ワクチンを依頼することになる。で、シリンジは、5回打ちと6回打ちがあるわけで、どちらのシリンジかにより接種できる回数は異なってくる。あー、ここまでで十分、システムが複雑だってこと分かるでしょ。

 で、我々としては、ワクチンはお願いしたものの、シリンジが届かないのではないかとやきもきしたわけだ。「ヤッベー、予約を取り直してもらわないといけなくなるやも」とドキドキした。結論を言えば、接種開始前に無事に届いたのだが、“ブツ”を確認できるまではかなり嫌な汗をかいた。

 一方、住民接種用のワクチンは4月5日の週から始まったが、これまでは都全域で分配されるワクチンは4箱、20箱、20箱と微々たるもので、品川区には2箱しか届いていなかった。それがようやく4月26日の週と、5月3日の週に、都全体に合計536箱が供給される。ただ、26日以降の各区市町村への配分量は、区市町村でばらつきが大きい。

 23区では最も少ない港区、品川区、豊島区、荒川区が3箱、一方、葛飾区は47箱をゲットした。市町村でも1~27箱と差がある。人口に比例しての配分ではなく、各自治体の希望数の6割程度を配分した結果だ。

 ワクチンは、国が都道府県への配分量をまず決め、都が区市町村の申請に基づいてさらに割り振る。配分量は1週間単位で決められ、今後も順次申請を行い、その申請に基づき配分される。

 最多の47箱が届く葛飾区は75歳以上の高齢者約6万6000人で、全対象者の人数に基づいて都に80箱を申請したようだ。わが品川区は、「2週間程度で打てる量」を考えて申請した。まずは、高齢者施設の入所者に接種を開始する方針だ。大型連休直前で、連休中の接種体制が整っていないため、敢えて少ない量を申請したわけだ。

 それなのに、だ。

 「品川区は65歳以上の高齢者が8万6000人おり、3箱ではその約3パーセントにしか1回目接種を行えない」と非難口調で報道された。いやいや、だから、2週間で接種できる量をもらっただけだから……。大量にゲットした自治体がほんとに一気に打てるかどうかも分からないじゃない?

 さらにそのメディアは「連休中に医師が確保できない」点も非難するが、連休中に医師が確保できないのは、品川区だけじゃないの。どこも苦労しているんだってば。実際、連休明けから接種を開始する方針の自治体もあると聞く。それに、接種体制が整わない中、連休中に無理に接種を開始しても、混乱してしまうと判断したことも理解してほしい。混乱を回避するため、品川区ではあえて高齢者施設の入所者から接種を始めたのだ。

著者プロフィール

三浦和裕(三浦医院院長)◎みうら かずひろ氏。2004年帝京大卒。東京警察病院、聖マリアンナ医科大などを経て、2012年より現職。2017年より品川区医師会理事。日本プライマリ・ケア連合学会認定医、日本外科学会認定登録医、がん治療認定医。

連載の紹介

三浦和裕の「地区医師会感染症担当理事のホンネ(折々グチ)」
品川区医師会理事で、感染症も担当する三浦氏。普段、医師会では感染症関連の仕事は皆無だったのが、新型コロナの流行により、区内のPCRセンターの立ち上げなどに奔走し、いつの間にか、日々更新される新たな通知などを熟読し、医師会員向けに整理し直して発信する立場に。そんな三浦氏が、行政やら日本医師会、東京都医師会、学会からの膨大な情報を通読し、自身も発熱患者の診療の最前線に立つ中で感じたこと、疑問に思うこと(時々は愚痴も)を発信します。

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