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「濃厚接触者か否かは医師が決める」の方針転換に思うこと

患者:私、コロナの濃厚接触なんだけど、検査してください。
私:濃厚接触?どうしました?
患者:会社に感染者がいます。部屋は違うけど。早く検査をお願いします。

 最近、こんな自称濃厚接触者の問い合わせが多い。首都圏での感染拡大の影響をひしひしと感じる。

 ただ、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の濃厚接触者に対して、国はそのフォローの方針を大きく転換していることはあまり知られていないように思う。昨年11月、国は「積極的疫学調査における優先度について」という事務連絡を発出。

(1)重症化リスクのある者が多数いる場所・集団との関連
(2)地域の疫学情報等を踏まえ感染が生じやすいと考えられる(三密や大声を出す環境その他濃厚接触が生じやすい等)

を比較した際は、(1)を優先するとしている。これらに該当しない場合はさらに後回しということ。

 今年1月8日には、「新型コロナウイルス感染症患者に対する積極的疫学調査実施要領」も同様な優先順位を示す内容に改定されている。

 この優先順位の考え方は、地域の感染状況を踏まえて、効果的な感染拡大防止を目指すために必要なものであり自治体ごとに方針を決めなければならない、ともある。

 そんな状況下で東京都はとうとう1月22日、現在の流行状況を踏まえ、積極的疫学調査の方針を変更し、優先順位を付けて対応するよう求める通知を出した。それを受けて品川区からも連絡が来た(品川区の関連サイト)。

 新たな方針では、「重症化リスクの高い新型コロナウイルス感染症の陽性者への迅速な対応により都民の命を守る」ことを目的とし、「各保健所が管轄する地域の実情に合わせ、発生した陽性者の重症化リスクに係る状況把握を優先」とする。すなわち、保健所は重症化リスクのある人や集団を中心に重点的に検査を行い、重症化リスクが低い場合は「濃厚接触者の認定や行政検査について、医療機関の医師による総合的な判断において実施する」と保健所と医療機関の役割を分けている。重点的調査や検査の対象とするのは、高齢者や基礎疾患を有する者、医療機関、 高齢者施設、障害者施設、特別支援学校などだ。

 要するに、一般企業や学校など重症化リスクの低い小児から若年者、中年者における濃厚接触者の把握、観察を都は断念したということだろう。ただし、このことは、あまり都民に周知されていないようで、冒頭のような「保健所から連絡が来ない自称濃厚接触者」が増えているのだろう。で、そのような問い合わせへの対応は、全てかかりつけ医にゆだねられ、必要に応じて検査も実施し、自宅待機なども指導するように、とのお達しだ。

 これってすごーく大きな方針転換だと思うのだが、他の事務連絡と混じってしまって、ちゃんと現場の医師に届いていないんじゃないかと心配になる。この方針転換を知らないかかりつけ医と受診者の間でトラブルが起きないだろうか。

著者プロフィール

三浦和裕(三浦医院院長)◎みうら かずひろ氏。2004年帝京大卒。東京警察病院、聖マリアンナ医科大などを経て、2012年より現職。2017年より品川区医師会理事。日本プライマリ・ケア連合学会認定医、日本外科学会認定登録医、がん治療認定医。

連載の紹介

三浦和裕の「地区医師会感染症担当理事のホンネ(折々グチ)」
品川区医師会理事で、感染症も担当する三浦氏。普段、医師会では感染症関連の仕事は皆無だったのが、新型コロナの流行により、区内のPCRセンターの立ち上げなどに奔走し、いつの間にか、日々更新される新たな通知などを熟読し、医師会員向けに整理し直して発信する立場に。そんな三浦氏が、行政やら日本医師会、東京都医師会、学会からの膨大な情報を通読し、自身も発熱患者の診療の最前線に立つ中で感じたこと、疑問に思うこと(時々は愚痴も)を発信します。

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