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新型コロナが怖くて通院中断、その先は?

 外来通院中に80歳代女性から電話を受けた。内容は「息苦しいから往診してくれない?」というもの。この方、高血圧、脂質異常症で当院をかかりつけとしていたが、昨年5月以降、未受診が続いていた。

 心の中で「またか」とつぶやきながら、外来が暇なこともあり患者宅へ急いで往診した。顔も下肢もむくんでいるのが一目で分かる。典型的な心不全だ。話を聞くと「(新型コロナの感染が)心配だったから、半年以上、家を出ていない。食事も日用品も宅配サービスがあって便利だし、宅配してもらえないものは娘に頼んでいるから、家を出なくても生活できる」とのこと。

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を恐れるあまり外出せず外来も受診せず、その結果、心不全になったわけだ。しかし、この患者にとってCOVID-19と心不全、どちらがより生命予後に影響するのだろうか。COVID-19は防げても、心不全の増悪で命を落としてしまう危険性を考えると胸が痛む。でも、介入可能な段階で会えてよかったとも思う。

  会いたかった 会いたかった
  会いたかった Yes!
  君に~


 最近になり、このような連絡が増えている。例えば、家にこもって足腰が弱ってしまい自宅内で転倒して大腿骨頸部を骨折したとか。症状が出ているのに、受診を我慢し、かなり重症化してから当院に連絡が入ることも少なくない。こんなことでも入院患者は増える。そうすれば、COVID-19患者であふれかえっている病院の負担はさらに増えるだろう。医療崩壊の背中を押してしまう。

 厚生労働省は「食べて元気にフレイル予防」なんてコピーとともにパンフレットを作っている。しかし、「三つの密」「新しい生活様式」に比べ一般社会での認知度は低い。メディアもGo Toの中止や飲食店の営業時間短縮については報道するが、「外に出て太陽の光を浴びましょう」とはあまり言わない。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は散歩ではうつらないとメディアに言ってほしいな。

著者プロフィール

三浦和裕(三浦医院院長)◎みうら かずひろ氏。2004年帝京大卒。東京警察病院、聖マリアンナ医科大などを経て、2012年より現職。2017年より品川区医師会理事。日本プライマリ・ケア連合学会認定医、日本外科学会認定登録医、がん治療認定医。

連載の紹介

三浦和裕の「地区医師会感染症担当理事のホンネ(折々グチ)」
品川区医師会理事で、感染症も担当する三浦氏。普段、医師会では感染症関連の仕事は皆無だったのが、新型コロナの流行により、区内のPCRセンターの立ち上げなどに奔走し、いつの間にか、日々更新される新たな通知などを熟読し、医師会員向けに整理し直して発信する立場に。そんな三浦氏が、行政やら日本医師会、東京都医師会、学会からの膨大な情報を通読し、自身も発熱患者の診療の最前線に立つ中で感じたこと、疑問に思うこと(時々は愚痴も)を発信します。

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