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私を訴訟の傍聴に駆り立てた強い「違和感」

2014/02/19
峰村健司

 はじめまして、眼科医の峰村健司です。

 私が医療訴訟ウオッチングを始めて、早7年が過ぎました。これまでに見てきた事例の分量も相当な量になっているので、そろそろまとめてみたいと思いながらも、自分1人の力では筆が進みませんでした。そんなところに日経メディカルさんから声がかかって、このコラムを担当させてもらえることになり、感謝しています。

 まず、ちょっと自己紹介をしたいと思います。私が医師になるまでには少し紆余曲折がありました。東京生まれ、東京育ちで、都立国立高校を卒業し、最初は東京大学の理学部で地理学を専攻しました。卒業後は旅行会社に入社し、当時は珍しかった海外競馬ツアーを企画するなどしましたが、お客さんは集まったものの、目的地(香港)で馬の感染病が流行したため競馬が中止となり、ツアー自体もキャンセルになるという不運もあり、1年を待たずして退職しました。

 その後、東京外国語大学の大学院を目指すも、入試に不合格となり断念しました。それまで医歯薬系の受験予備校でアルバイトをしていて、教え子が医学部に入っていくのを眺めていて、自分も一丁やってみようと、医学部を再受験しました。幸いに合格し、医師になって現在13年目です。再入学のとき、紆余曲折を知る友人からは、「今度は何年続くのか」とからかわれましたが、幸い性に合っていたのか、13年続いて現在に至っています。

傍聴席に伝わる被告側の医師たちの緊張
 さて、私が医療訴訟ウオッチングを始めたきっかけは、医療界を震撼させた、福島県立大野病院事件でした。自分も当時は非常なる驚きと怒りを感じ、担当医が逮捕されたニュースが流れた翌々日に、事件を憂うコメントを私の個人ウェブサイトに書きました。

 その後、ネット上のいろいろなところで様々な議論がなされましたが、私は主に「元検弁護士のつぶやき」という、元検事である弁護士さんが開設していたブログで、議論に参加していました。そのブログでは、人数は少ないながらも法律家の参加があり、法律家の立場からの解説は、裁判に対する理解を深めるのに大変役に立ったものでした。

 その中で、多くの医療者が「トンデモ判決」と評するような判決に対して、法律家から「医療側が負けるのは、医療側の弁護士が裁判官を説得できなかったからだ」とか、「医療訴訟では、原告側に協力する医師もいる。つまり医師対医師の争いなのだ」などという声が上がり、さらに言えば、そのような考え方が法律家の間では支配的だったように映りました。私は、医療側に責任を押し付けるようなそうした見解に違和感を覚え、本当にそうなのだろうかという疑問を抱き、本格的に医療裁判のウオッチングを始めることになりました。

著者プロフィール

峰村健司(順天堂大学大学院医学研究科博士課程、こはら眼科)●みねむら けんじ氏。1967年生まれ。東京大学理学部を卒業後、旅行会社勤務を経て、東大医学部に再入学。関東中央病院眼科部長などを歴任。診療や研究の傍ら、医療訴訟の傍聴・記録閲覧に出向き、判決が真っ当か「トンデモ」かの検証を続けている。

連載の紹介

その判決、正当?不当? 医療裁判深層リポート
メディアで報じられる医療訴訟の判決内容に対し、医療者側から批判的な声が寄せられることは少なくありません。眼科診療の傍ら医療訴訟の傍聴を重ね、裁判記録に丹念に目を通してきた「医療訴訟ウオッチャー」が、「どうしてそんな判決が?」という現場の疑問に明快に答えます。

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